【7月16日 AFP】韓国にとって最も深く心に傷を残す事件の1つ、民主化を求める活動家が殺された光州事件に焦点を当てた映画『華やかな休暇(May 18)』が、軍事政権に終止符が打たれてから20年経ったこの夏、公開される。

 製作者は、同映画を観た若い世代が1980年の惨劇を思い起こすよう、そして地元の映画産業がハリウッドの超大作と張り合えるよう願っている。

 7月26日より全国公開される同映画は、1980年5月18日から10日間続いた大量殺りくにより一般市民の命がどの様に奪われたかを描いたアクション・ドラマ。

“華やかな休暇(Splendid Holiday)”というコード・ネームのもと2万5000人余りの特殊部隊が、陸軍少将の全斗煥(チョン・ドゥファン、Chun Doo-Hwan)率いる軍事クーデターを追う大衆暴動を鎮める為、南西部の都市、光州(旧Kwangju、現Gwangju)へ送られた。

 反乱は、公式な集計によると200人の死者と2400人余りの負傷者を出し、鎮圧された。しかし光州の活動家達は、実際の死亡者数はもっと多かったと確信しているという。

 全斗煥はこうして大統領に就任したが、この光州事件により在任期間中もずっと民主化を求める活動に拍車がかかることになり、結果的に1987年には民主主義が復活した。

 「この映画は光州事件そのものに直接焦点を当てた初めての作品です」同映画のプロデュース会社CJ Entertainmentの広報担当者のScott Jo氏は話す。

 「国内映画はハリウッド映画に対し苦戦を強いられてきました。しかしこの映画がこの夏、地元の映画産業が立ち直るよう弾みをつけてくれると信じています」とJo氏はAFPに話した。

 製作費は地元の標準的な主要経費10億ドル(約1219億円)を上回っている。

 監督は映画『箪笥-たんす-(Janghwa, Hongryeon、英題:A Tale of Two Sisters』で、ゆうばりファンタスティック国際映画祭2004(Yubari Fantastic Film Festival in 2004)にてグランプリ(審査委員大賞)を受賞したキム・ジフン(Kim Ji-Hoon、36)が務める。

 「この映画は政治やイデオロギーではなく、人間に焦点を当てた作品です。どの様に普通の人々が無力にも悲劇の旋風に巻き込まれたか、そしてどの様に平和な生活が壊されたのかを見せたいのです」とジフン監督は話す。

 物語はキム・サンギョン(Kim Sang-Kyung)演じるタクシードライバーやアン・ソンギ(Ahn Sung-Ki)演じる、タクシードライバーの弟で暴動の間武装市民を率いた元陸軍大佐など9人の人物を中心に展開される。

 全政権はこの暴動を、共産主義論者と当時の野党党首、金大中(キム・デジュン、Kim Dae-Jung)の支持者が起こした反乱であるとした。

 当時検閲を受けた地元のニュース番組は、民主化を求める活動家達を「pokdo(暴力集団)」と表現し、北朝鮮のスパイであるという印象を視聴者に与えた。

 光州の多くの活動家は、全政権の特殊部隊から受ける残虐行為に直面し、自己防衛の為武器を手に取るも、多くの人々が全政権のプロパガンダの犠牲となった。

 「簡単に『pokdo』としての汚名を着せられてしまった時、光州市民はどんなに深く傷ついたか、私達は認識しなければいけないと思います」と出演俳優のキム・サンギョンは先日行われたプレミア上映会後、記者団に対しこう語っている。

 「この映画が若い世代にとって1980年に何が起こったか振り返る良い機会になってくれればいいと思います」

 タクシー・ドライバーの恋人役を演じる、女優のイ・ヨウォン(Lee Yo-Won)は、実際の事件を描いたこの映画は、TVや写真で見るより感動的で、そんな映画の役を演じることが出来て誇りに思っていると話す。

 「しかし私が光州事件に対して感じた悲しみは、実際の被害者や家族の悲しみとは比較にならないと思います」とも付け加えている。

(c)AFP/Park Chan-Kyong