【ハリウッド/米国 25日 AFP】第79回アカデミー賞は授賞式が25日午後5時(日本時間で26日)、ハリウッドのコダック・シアター(Kodak Theatre)で開催された。

■ハリウッドを代表する俳優に

 主演男優賞を受賞したフォレスト・ウィッテカー(Forest Whitaker)は、今回の受賞で一気にハリウッドを代表する俳優となった。「ラストキング・オブ・スコットランド(The Last Kingdom of Scotland)」でウガンダの独裁者アミン(Amin)大統領を見事に演じたウィッテカーは、東テキサスと南ロサンゼルスで質素な少年時代を送っていた。

 「僕が子どもの時は、映画を見る機会といえばドライブインで待っている時くらいのものだった。だから映画俳優になるなんて考えもしなかったよ。だから、今夜はこんな夢みたいなこともあり得るんだって気づかせてくれたんだ」とウィッテカーは語った。

■アフリカの冷酷な独裁者をリアルに表現

 さらに「皆が信念をもてば、新しい現実をつくりあげることもできる」と、ウガンダの人々の力強い精神力をたたえた。ウィッテカーはこの、アフリカの冷酷な独裁者を十分に演じきるため、スワヒリ語を学び、アミン大統領のアクセントをまねし、できる限りの文献とテープなどの資料に目を通した。また、アミン大統領が失脚するまで大使兼将軍を務めていた実の兄弟にも面会し、できるだけ本物に近い演技ができるよう、努力した。その努力が実を結び、今回レオナルド・ディカプリオ(Leonardo DiCaprio)やピーター・オトゥール(Peter O’Toole)を凌いでの主演男優賞受賞となった。

■生い立ち

 1961年7月、テキサス州ロングビュー(Longview)に生まれたウィッテカーは、小説家の父と、2つの学問で修士号を取った母親を持つ。現在45歳のウィッテカーが俳優になった経緯は、ほとんど偶然のようなもの。カリフォルニア州立ポリテクニック大学(California State Polytechnic University)の奨学生で、アメリカンフットボールの選手でもあったウィッテカーは、背中に大けがをし、その選手生命を絶たれた。

 しかし、アスリートの世界を去ることは同時に、役者の世界への扉を叩くことでもあった。南カリフォルニア大学(The University of Southern California)でオペラを学び始めたウィッテカーは、後に演劇学部への編入を許可される。

■デビューからの道のり

 1982年に学業を終えると、デビュー作「初体験/リッジモント・ハイ(Fast Times at Ridgemont High)」でオスカー受賞者のショーン・ペン(Sean Penn)、ニコラス・ケイジ(Nicolas Cage)と共演する。それからおよそ10年間の時を経た今、ウィッテカーはハリウッドでも名の知れた俳優となっていった。見事な演技力に、印象的なたれ目がさらにウィッテカーを目立たせた。

 さらに、「ハスラー2(The Color of Money,1986)」や「プラトーン(Platoon)」への出演に続き、翌年にはロビン・ウィリアムス(Robin Williams)の仲間役で出演した「グッド・モーニング・ベトナム(Good Morning Vietnam)」が大ヒットとなる。その後、クリント・イーストウッド(Clint Eastwood)監督の「バード(Bird)」で苦悩の人生を送ったジャズサクソフォン奏者、チャーリー・パーカー(Charlie Parker)を演じ、カンヌ国際映画祭(the Cannes Film Festival)で男優賞を獲得、ゴールデン・グローブ賞(Golden Globe Award)でノミネートを受ける。

 1990年代には飛び抜けて注目されることのなかったウィッテカーだが、ニール・ジョルダン(Niel Jordan)監督のサスペンスラブストーリー「クライング・ゲーム(The Crying Game)」では高い評価を受けている。その他、1991年の「レイジ・イン・ハーレム(A Rage in Harlem)」では脚本を手掛け、テレビドラマ「ドア・トゥー・ドア(Door to Door)」ではエグゼクティブプロデューサーを務め、エミー賞(the Emmy Award)を受賞。

■自分の演技はこれから

 ウィッテカーは近年の作品を通して、落ち着いた自信を持てるようになってきたという。それが「ラストキング・オブ・スコットランド」での大役を引き受けるきっかけとなった。しかしながら、本人はさらなる飛躍を自分に期待しているという。

 「今までは自分の中に眠っていた能力に気づいていなかったんだ。正直に言って、本当にベストな演技を見せていくのはこれからだと思うよ。それに最近は自分の中でアーティストとしてバランスが取れてきたと思う。だからこれからはもっと違った役柄も演じていきたいと思っているよ」と、ウィッテカーは語った。

写真は、授賞式でトロフィーを手にスピーチするウィテカー。(c)AFP/Gabriel BOUYS