ミャーン! 5000rpmを超えるとスーパーチャージャーが甲高い金属音を轟かす。車窓はイッキに後方へ流れる。ウォオオオオ! なんという加速だ! 血中にアドレナリンが放出され、心拍数が上がったのだろうか、ガス・ペダルを緩めたあとでもドキドキしている。この感じはなんだろう? ゆっくりと最上点に登ったジェット・コースターが急勾配をイッキに下るのに似ているかもしれない。助手席の茂呂カメラマンはヘラヘラしている。ジープ・グランドチェロキー・トラックホーク(以下トラックホーク)の料金所ダッシュはそれほど強烈だった。
「なんか、笑っちゃいますね」という茂呂カメラマン。東京のFCA本社で借りだしたトラックホークで中央道を八ヶ岳に向かっている。ジープ・グランドチェロキーの試乗会が八ヶ岳麓のホテルで開催されるからだ。東京から八ヶ岳のホテルまでも試乗コースというプログラムになっている。
トラックホークに搭載されるエンジンは6.2リッターV8+スーパーチャージャー。なんと最高出力710ps/6200rpm、最大トルク868Nm/4700rpmを発生する。2470kgという巨体なのに0-100km/h加速は3.5秒だ。
参考までに書くと、ランボルギーニ・ウルスは最高出力650ps、最大トルク850Nm。ベントレー・ベンテイガとポルシェ・カイエン・ターボは最高出力550ps、最大トルク770Nm。トラックホークは日本で買える最強のSUVなのである。
外装はスタンダードのグランドチェロキーと基本的に同じだ。とはいえ、トラックホークは漆黒のボディに加え、フロントグリルもブラックアウトされているから、中央道をゆったり走っていても迫力があるようだ。前走車が車線を譲ってくれる。
インテリアには真っ赤なレザーが奢られているが、デザインはスタンダード・モデルと同じである。
異なるのはドライブ・モードのセレクト・スイッチで、スタンダード・モデルがスノー、サンド、オート、マッド、ロックという5種であるのに対し、トラックホークのそれはトラック、スポーツ、オート、スノー、トゥという5つになる。セレクト・ダイアルの脇にはローンチ・コントロール・スイッチが備わる。映画『ワイルド・スピード』か!
大パワーを受け止めるためにバネは締め上げられており、乗り心地は速度域を問わずゴツゴツしている。295/45ZR20のランフラット・タイヤもショルダーが硬いようだ。サスペンションにはアダプティブ・ダンパーがおごられているが、オート・モードでも乗り心地は硬く、ボディは上下にユサユサ揺られることが多かった。
八ヶ岳麓のワインディングも当然のごとく速い。ほとんどロールしないでコーナーを抜けていく。ハンドリングは素直で気持ちいい。フロント6ピストン、リア4ピストンのブレンボ製ブレーキの制動力も素晴らしいと思った。
エネルギーに満ちたトラックホークの価格は1365万円。プレミアム・ブランドのハイパワーSUVは2000万円以上するから、そこに魅力を感じる人もいるだろう。
トラックホークから乗り換えたのは、6.4リッター自然吸気V8を搭載するSRT8だ。
トラックホークに比べたら大人しいと言っても、最高出力468ps/6250rpm、最大トルク624Nm/4100rpmというマッスルなSUVである。
価格はトラックホークよりぐっと下がって885万円だ。
いまや貴重な自然吸気V8だけれど、私はやっぱりこの味が好きだと再確認した。ガス・ペダルを踏む右足の力加減、エンジン回転数、そして加速感が見事にシンクロして、とても気持ちがいい。トラックホークでは使わなかったパドル・シフトを操作しているのも、反応が自然なエンジンだからだろう。トラックホークよりクルマとの一体感が強いと思った。つづら折りの道を右へ左へ、大きくて重いSRT8でコーナリングを続けても鬱陶しさや疲労感がない。むしろ元気になっていく気がした。
グランドチェロキーのV8モデル2台に乗って、極端に過剰なものは人を元気にするのだと思った。
トラックホークでは爆発的パワー、SRT8では自然吸気V8のフィーリングが味わえる。しかも、どちらも家族が乗れる実用車というところが魅力だ。こういうのを自然と乗りこなす人はカッコイイと思う。
■ジープ・グランドチェロキー・トラックホーク
駆動方式 フロント縦置きエンジン全輪駆動
全長×全幅×全高 4890×1980×1800mm
ホイールベース 2915mm
トレッド前/後 1670/1660mm
車両重量 2470kg
エンジン形式 V型8気筒OHV+スーパーチャージャー
総排気量 6165cc
最高出力 710ps/6200rpm
最大トルク 868/4700rpm
変速機 8段AT
サスペンション前 ダブルウィッシュボーン/コイル
サスペンション後 マルチリンク/コイル
ブレーキ前&後 通気冷却式ディスク
タイヤ 295/45ZR20
車両本体価格 1365万円
■ジープ・グランドチェロキーSRT8
駆動方式 フロント縦置きエンジン全輪駆動
全長×全幅×全高 4850×1985×1800mm
ホイールベース 2915mm
トレッド 前/後 1670/1660mm
車両重量 2400kg
エンジン形式 V型8気筒OHV
総排気量 6416cc
最高出力 468ps/6250rpm
最大トルク 624Nm/4000rpm
変速機 8段AT
サスペンション前 ダブルウィッシュボーン/コイル
サスペンション後 マルチリンク/コイル
ブレーキ前&後 通気冷却式ディスク
タイヤ 295/45ZR20
車両本体価格 885万円
文=荒井寿彦(ENGINE編集部) 写真=茂呂幸正
(ENGINEWEBオリジナル)
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文=荒井寿彦(ENGINE編集部) 写真=茂呂幸正
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