米図書館で貸し出した中国稀覯本が偽物にすり替えられる窃盗事件、偽名で「フジモリ」名乗る
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【8月8日 AFP】米カリフォルニア州の図書館利用者が、希少な中国の写本を借り、偽物にすり替えて返却する手口で21万6000ドル(約3180万円)相当の稀覯本(きこうぼん)を盗んだとして、窃盗罪で起訴された。米当局が7日、明らかにした。
司法省によると、ジェフリー・イン被告(38)は、カリフォルニア大学ロサンゼルス校の図書館で600年以上前のものも含む古典を手にするために、複数の偽名を使っていた。
起訴状によると、イン被告は、蔵書を借りて数日後に偽物を返却していた。イン被告はその工程の後、頻繁に中国へ渡航していたという。
司法省は、「図書館は希少な中国の写本が何冊か紛失していることに気付き、初期調査で、紛失した蔵書を最後に閲覧したのは『アラン・フジモリ』と名乗る訪問者だったことが判明した」と述べた。
イン被告が滞在していたロサンゼルス近郊のホテルを捜索したところ、貸し出されていた蔵書と同じ様式の白紙の本と蔵書管理用ラベルが見つかった。これらを組み合わせて本物の代わりに図書館に返却する「ダミー本」を作成していたとみられる。
図書館は、稀覯本は館内閲覧のみとしていて、普通の本のように持ち出しは認めていない。
サンフランシスコ・ベイエリアのフリーモント出身のイン被告は、複数の名義の図書館カードを所持していることも判明した。
イン被告は現在州に勾留されているが、重要な美術作品の窃盗罪で有罪となった場合、連邦刑務所での10年以下の拘禁刑を科される可能性がある。
中国は世界で最も急速に成長している美術市場の一つで、政府公認の美術館が急増する一方で、民間市場も活発化している。背景には、裕福かつ愛国的になった中産階級が、国の文化遺産を取り戻そうとする動きがある。(c)AFP