【5月30日 AFP】米ホワイトハウスは29日、「ワクチン懐疑派」として知られるロバート・F・ケネディ・ジュニア厚生長官の政策方針を示す「米国を再び健康に(MAHA)」報告書に記載された研究者らから、存在しない研究が引用されているとの指摘を受け、報告書を訂正した。

同報告書は5月22日、ケネディ厚生長官と小児慢性疾患の要因を評価するために任命された大統領委員会によって発表された。

しかし、報告書に記載された少なくとも4件の研究論文の著者や引用元はAFPに対し、自分たちや所属機関が執筆していない、あるいは存在しない論文の著者として記載されていると語った。

ホワイトハウスのキャロライン・レビット報道官は29日の会見で、「フォーマット上の問題」による不備だと説明。「報告書の内容自体が損なわれるものではない」と述べ、ケネディ氏とそのチームの仕事は「確かな科学に基づいている」と信頼を示した。

これらの誤りは、非営利団体(NPO)オールブリットン・ジャーナリズム・インスティテュートに関連する米国のデジタルニュースサイト「NOTUS」によって29日に初めて報じられた。

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミック(世界的大流行)における若者の不安と抑うつに関する論文の著者として記載されていたコロンビア大学の研究者ノア・クレスキ氏はAFPに対し、「それはわれわれの研究ではなく、そもそも実在する研究ですらないようだ」と語った。

また同大の疫学者キャサリン・キーズ氏もAFPに対し、JAMA(米国医師会雑誌)掲載論文の著者として自分の名前が記載されており、そのテーマの研究は行っているものの「該当する論文は書いていない」と述べた。

米保健福祉省(HHS)はAFPの質問に対し回答を控え、ホワイトハウスに問い合わせるようにと述べた。

だが、レビット報道官は会見で、報告書の作成方法や人工知能(AI)ツールを使用したのかといった質問には答えず、それらの回答はHHSに委ねると述べた。

AFPが調査したすべての引用文献は更新版で、実在する出典へのリンクに差し替えられたが、疑わしい研究が1件、ニューヨーク・タイムズ紙の記事に置き換えられていた。

民主党全国委員会は29日、同報告書には「誤情報があふれている」と強く非難。ケネディ長官の機関は「存在しない研究や出典をもって、自分たちの政策優先事項を正当化しようとしている」と糾弾した。(c)AFP