【5月11日 AFP】米バージニア州シェナンドーア(Shenandoah)郡の教育委員会は10日、1861~65年の南北戦争(American Civil War)で戦った南部連合(Confederate States of America)軍の将軍の名前を2校の校名に復活させる案の採決を行い、5対1で可決した。4年前、人種差別の撤廃を求めるデモを受けて、校名から削除されていた。

 同州北部クイックスバーグ(Quicksburg)にあるハニーラン(Honey Run)小学校はアシュビー・リー(Ashby-Lee)小学校に、マウンテンビュー(Mountain View)高校は、ストーンウォール・ジャクソン(Stonewall Jackso)高校にそれぞれ校名を戻す。

「ストーンウォール」ことトーマス・ジャクソン(Thomas Jackson)とロバート・E・リー(Robert E. Lee)は南軍の将軍で、ターナー・アシュビー(Turner Ashby)は騎兵指揮官だった。いずれもバージニア州出身。

 シェナンドーア郡の措置は流れに逆行するものだ。奴隷制存続を主張していた南部連合の要人の名前は、学校や基地、記念碑から削除する動きは全米に広がった。

 こうした運動が勢いを増したきっかけは、2015年6月にサウスカロライナ州で白人至上主義者が黒人教会で銃を乱射し9人を殺害した事件だった。さらに、2020年5月にミネソタ州で黒人男性ジョージ・フロイド(George Floyd)さんが白人警官に殺害される事件をきっかけに拡大した。

 シェナンドーア郡で2校の名前を復活させる措置をめぐり、教育委員会での話し合いは10日未明まで続き、現役の児童・生徒や卒業生、保護者、住民が激論を交わした。

「誇りと名誉、伝統」と書かれたTシャツを着た男性は、南軍の将校の名前を学校から削除するのは「歴史の消去」であり、「子どもたちの洗脳」に等しいと主張した。

 黒人の8年生の生徒はこれに反論。「その名前を復活させれば、私は先祖を奴隷にするために戦った男を心に浮かべなければならなくなる」と訴えた。

 市民権活動家の息子、ジーン・キルビーさんも復活に反対。「南部連合は南北戦争で戦って負けた」「米国に対する反乱を主導した人々を追悼し続けたいのか」と主張した。

 南北戦争時、南部連合は米国から離脱し、奴隷制を維持するために戦った。(c)AFP