【8月24日 marie claire style】時代のめまぐるしい変貌の中で、言葉は常に進化している。その側面に、色々な時代的要素が付随するので当然かもしれない。

「ディオール オム」の2018サマーコレクションは、パリのグラン・パレで披露されたが、今回もっともメディアのカメラマンのフラッシュが止まらなかったのは、最前列のシートにいた、ラッセル・ウェストブルック、ジミー・バトラーといったバスケットのスター選手たちだった。こうして今ではアスリートたちも、ファッション界にインスピレーションを与える存在になってきている。

 そうだとしても、「ディオール オム」のアーティスティック ディレクター、クリス・ヴァン・アッシュのコレクションは、ロゴが逆さになっていたり、ジャケットの上からニットを着ていたりと、一般的なスポーツ・ウェアの概念とまったく異なっていて、そこには並々ならぬロック魂が込められている。

「ひとを混乱させるのが、何よりも好きだ」というクリス・ヴァン・アッシュは、前任者のエディ・スリマンから老舗メゾンを継いでから、今年でちょうど10年になるという。エディと一緒に「サンローラン」から「ディオール」に移ったクリスは、この10年でスタイルの複合性という独自の視点を確立させてきたが、そうした彼のコレクションは、メディアからもコンスタントに高い評価を得ている。

 インタビューが好きではないというし、写真からも気難しい風雲児の印象だが、実際に会ってみると、柔和な表情が印象的な美男のデザイナーだ。7分丈の黒のセーターに黒のスニーカー姿で、今年4月にオープンしたギンザ シックスの「ハウス オブディオール ギンザ」で迎えてくれた。

「今日はとても大事な日です。フォール・コレクションの1回目を東京でプレゼンテーションするのですから」

 そんな日に取材にきたことを詫びながらも、インタビューを続ける。

――どうして東京なのでしょうか。

「東京は新しいものを受け入れてくれる都市だし、世界の先頭を切って発表するには、ぴったりのモード都市だからです。フリーダムのエスプリがあるからこそ、日本では敏感に反応してくれる」

――10年経った今、これからどのような方向に向かわれるのですか。

「僕はそんなに先の未来まで見据えた計画は立てない。現在をみているだけで充分だ」

――これだけは欠かせない、といった「ディオール オム」のエスプリがあれば、教えてください。

「まずエリタージュ(老舗のメゾンがこれまで継承してきたもの)、それからエレガンス。主軸になっているのはストリート感覚だが、今はそこにスポーツが入ってきている。その3本の柱といえる」

「ストリート」という言葉も、これまでは「アート」と対極にあったのに、コンテンポラリー・アート界に君臨する天才画家ジャン=ミシェル・バスキアが「ストリート」から誕生して以降、何か無視できないものになってきた。「モードの破壊者」と評されるだけあって、クリスが手掛けるコレクションは、日頃「ストリート」で見慣れているスポーツ・ウェアでさえデカダンなシルエットに変えてしまうし、そうした鮮やかなカッティングだからこそ、月並みなものでは満足しない老舗メゾンの顧客たちに支持されているのだろう。

 今年41歳、ベルギーからやってきたクリス・ヴァン・アッシュは、これからも汲めども尽きない革命的創造力で、世界のメンズ・モード界に挑戦し続けるのだろう。

(インタビュー・文 村上香住子)

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(c)marie claire style/photo: Karim Sadli、text:Kasumiko Murakami