■男性服のパワーを女性たちへ

「ココ・シャネル(Coco Chanel)は女性の感情を揺さぶった。しかしイヴ・サンローランは、彼女たちに力を与えた」とベルジェが語ったことがある。サンローランはディナージャケットやサファリスーツ、ジャンプスーツといった男性服のパワーシンボルを、女性たちのために作り変えた。「男性がもっと自信を持って自分たちの服を着ていることに気づいた」とサンローランは貴重なインタビューの中で語った。「だからスーツやトレンチコート、タキシードやピーコートといったものを追求し、女性にも同じだけの自信を与えようと思った」

「スモーキング」として知られ、素肌の上に着用されることの多かった彼の女性用ブラックタキシードは、1966年にスキャンダルを引き起こした。ニューヨーク(New York)のソーシャライト、ナン・ケンプナー(Nan Kempner)がマンハッタン(Manhattan)のレストランで、女性がパンツ着用での入店禁止を告げられた際、彼女はパンツを脱ぎ捨てたのだ。

 サンローランはその後、彼の1番の顧客であるケンプナーのそのスタイルをまねて、太もも丈のミニドレスとしてのジャケットをデザインした。

パリ市内にオープンするイヴ・サンローランのミュージアム内に展示されている生地サンプルとサファリスーツ(2017年9月25日撮影)。(c)AFP/STEPHANE DE SAKUTIN

■サンローランのスタジオを公開

 パリの新ミュージアムのメインは、サンローランのスタジオだ。ファッションショーの準備のために日夜仕事をこなした、最も神聖な場所だ。彼が2002年に離れた時のままにしてあり、カトリーヌ・ドヌーヴ(Catherine Deneuve)、ビアンカ・ジャガー(Bianca Jagger)、パロマ・ピカソ(Paloma Picasso)といった、彼の魅力的な女友達の写真がデスクに飾られている。しかしながら1番の見どころは、彼の友人であるアンディ・ウォーホル(Andy Warhol)がサンローランのフレンチブルドッグ、ムジック(Moujik)を描いたニューイヤーズカードだろう。

パリ市内にオープンするイヴ・サンローランのミュージアム内に展示されている作業机(2017年9月25日撮影)。(c)AFP/STEPHANE DE SAKUTIN

 またこの部屋の壁の1つは、全面鏡で覆われている。サンローランが直接モデルを使ってデザインし、その作品をあらゆる角度から確かめながら進行できるようにするためだ。このミュージアムは、ベーシックなスケッチから完全なデザインまで、サンローランの制作過程の内側も明かしている。彼のオートクチュール作品のいくつかは、作り上げるのに何千時間も費やされたという。