■今、アフリカの「トラッド」がアツい

 2012年、「B.J.」の愛称で知られるオモボラジ・アデモス(Omobolaji Ademosu)は銀行の仕事を辞め、自身のメンズブランド「Pro7ven」を立ち上げた。ラゴスの中心から離れたオジョドゥ(Ojodu)にある2つの工房では、ディーゼル発電機の音が鳴り響く中、数十人の職人が裁縫やアイロンをしながら、いくつものオーダーをこなしていた。B.J.は自身のスタイルを「アフリカン・コンテンポラリー」と呼ぶ。格調高いオーダーメイドの刺繍襟付き民族衣装などは、15万ナイラ(約5900万円)に至る値段で販売されている。

「トラッドが流行りだ」とB.J.は笑う。「日々、いろんなナイジェリアの民族衣装に着替えるのはクール! これぞラゴス精神だ。国境もなく、俺たちは一つなんだ」

 ビジネスや政治のミーティングに出席するときも、ホスト役の出身地の民族衣装を着ていけば敬意を示すことができ、大きな契約を取り付けられるかもしれない。たとえばナイジェリアの大統領、ムハンマド・ブハリ(Muhammadu Buhari)は2015年の選挙活動で、国中のあらゆる民族衣装を着用した。ナイジェリアには500以上の民族グループがあり、生地やスタイル、ジュエリーのバリエーションも幅広い。それぞれの民族ルックは誇りの源であり、ナイジェリアの国境をも超えて広がっている。

 5月初旬、南アフリカの「経済的開放の闘士、EFF(Economic Freedom Fighters)」派のスポークスマン、Mbuyiseni Ndloziはインスタグラム(Instagram)に自身の写真を投稿した。身に着けていたのは、ダークな色合いの民族衣装にジェムストーンのネックレス。彼の多数の熱狂的な女性ファンたちは、絵文字のハートとともにコメントをすぐさま書き込み、愛情をこめて彼を「民族衣装のプリンス」と呼んだ。