【6月21日 AFP】ナイジェリアのポップアイコン、ウィズキッド(Wizkid)のミュージックビデオでは、ぴったりとしたショートパンツから長い脚を見せたダンサーたちや「モエ・エ・シャンドン(MOËT & CHANDON)」のシャンパン、派手な車などがフィーチャーされていた。しかし歌手本人は今、「ヴェルサーチ(VERSACE)」のTシャツや下着を見せるローライズのジーンズから、アフリカの伝統衣装へと服装を切り替えている。これこそがファッション中心地、ラゴス(Lagos)における若者の新たなトレンドなのだ。

 昨年、ヴォーグ(VOGUE)は「ナイジェリアのもっともおしゃれなポップシンガー」としてウィズキッドを取り上げた。外見がきわめて重要で激しい競争があるこの国で、とくに切望される名声ある称号だ。「これが今、流行なんだ」と26歳のスーパースター、ウィズキッドはヴォーグ誌に語る。「僕が故郷で着るのはアフリカの生地でできたものばかり。ナイジェリアの北部、西部、南部とあらゆる地域から素材を取り寄せてミックスしている」

 かつて老人や田舎の人のみが着ると思われていた服装が、今のファッショントレンドだ。南西部で着られている3重にレイヤーされた大きなローブから、南部の刺繍のある襟なしシャツ、そして北部の長いチュニックとアシンメトリーな刺繍入り帽子もだ。近年、伝統衣装は「トラッド」と呼ばれ、オフィスやナイトクラブ、さらにウエディングやビジネスミーティングでも着用されている。

 2000万人もの居住者が暮らすメガシティのラゴスでは土地が不足しており、ショッピングセンターもほとんどなく、レディ・トゥ・ウエアのブティックは見つけるのが難しい。不景気とナイラ(通貨単位)の下落は、裕福なナイジェリア人たちのドバイやパリ、ミラノでの爆買いに歯止めをかけた。その代りに彼らは地元で買い物を済ますようになり、それが道端の仕立て屋の人気上昇につながった。