肯定的なエネルギー

 アテナさんは「みなさん、もっと塗って!もっと!っておっしゃるんですよ」とため息をつく。

 大きな産科医院の医師であるハマ(Hama)さんは、いとこの結婚式を前に娘のマリアム(Mariam)さんを連れてサロンにやってきた。初めてサロンに来たマリアムさんは16歳だが、つけまつげをつけ、ゴールドのアイシャドーとペチュニアの色の口紅を塗ってもらうと大人の女性のようになった。

 ハマさん一家はカブールで拉致事件や過激派の襲撃が増えるにつれて他の家族と同様にレストラン通いをやめ、大きな集まりも避け、タリバンが横行するカブール市外に車で行くこともなくなった。そのため、まれな外出の機会となった結婚式に懸ける意気込みは制限なしの青天井なのだとハマさんは語る。

 数年前、若い研究者のリマ・コーリ(Rima Kohli)さんは、女性を嫌悪するタリバン支配下の苦難の時代を含めた40年近い戦争の後にメーキャップがアフガン女性に与える影響について調査した。

「女性は戦争から最悪の心理的、感情的、精神的な影響を被ったのです」とコーリさんは言う。「そのため小さな達成可能な一歩から始めて、たとえば、自分をきれいだと感じられるようになることは、少なくとも何らかの肯定的なエネルギーを生み、さらに深い問題に取り組む段階につながるのです」

 だがほとんどの保守派にとって美容院は憎悪の対象であることに変わりはない。アテナさんは幻想を抱いていない。「数年たった今でも…彼らは私たちを脅かすことができます。私たちは用心を怠ってはならないのです」 (c)AFP/Anne CHAON