【12月19日MODE PRESS】フランスの高級フレグランスメゾン「メゾン フランシス クルジャン(Maison Francis Kurkdjian Paris)」。創業者の1人であり、調香師であるフランシス・クルジャン(Francis Kurkdjian)は、パリ出身の47歳。1999年に「ジャンポール・ゴルチエ(Jean Paul Gaultier)」の世界的ベストセラー“ル マル”の香りを手がけ、一躍人気調香師となった。その後「バーバリー(BURBERRY)」の“マイバーバリー”や「ニナリッチ(NINA RICCI)」の“レクスタス”など数々のヒット作を生み出し、その活躍は業界でも抜きんでている。

 来年2月には「メゾン フランシス クルジャン」の人気シリーズ「アクア」から、待望の新作を発売。「神々しい天空の水」という意味を持つ“アクア セレスティア”は、空の青と海の青を境目なく繋いだ、完全なる静けさを表現した。ライム、クールミント、ブラックカラントでアクセントをつけ、ミモザアブソリュートで優しく束ねたムスキーフローラルのどこまでも無限に続くすがすがしい香り。そんな最新作を携え来日したクルジャンに、彼の創作哲学を聞いた。

(c) Maison Francis Kurkdjian Paris

■詩を詠むように香りをつむぐ

 アクアシリーズは爽やかさを追求した透明感あふれるフレグランス。“アクア セレスティア”は「五大元素(地、水、火、風、空)」の一つであり、太古から生命の源である水(アクア)を表現したという。そのレシピについてクルジャンはこう語る。「ムスクはアクアシリーズの共通項。デリケートで心地よく、まるで月にかかる靄のよう。そして南仏の手摘みのミモザはパウダリーで軽やか。ライムは弾けるような躍動感、クールミントはひんやりとした清涼感を強調し、パワフルなブラックカラントはフルーティーな香りをうまく引き出す」。その説明はまるで詩を読んでいるかのように美しく、私たちのイマジネーションを大いに刺激してくれる。

新作“アクア セレスティア”について解説するクルジャン(2016年12月5日撮影)。(c)MODE PRESS/Mana Furuichi

■題名から書き始める作家のように

 希少なエッセンシャルオイルを使った、コンテンポラリーで自由な香りは贅沢そのものだ。クルジャンはメゾンのコレクションすべてのコンセプトと調香を手がける。視覚と聴覚で香りを表現したイメージムービーもアーティスティックディレクターとして制作するなど、すべての工程に直接関わっているという。その完璧な仕事ぶりから「天才調香師」と呼ばれることについては「天才かどうかは分からないが、とにかく一生懸命、良い仕事をしようとつねに心がけている。そして調香師として、それぞれの個性とストーリーを持った香りを生み出すようにしている」と語る。

 クルジャンの調香は、まず名前を決めることから始まる。「作家であるなら、まずタイトルを決めてから小説を書くというようなもの。名前にあったイメージを膨らませて作っていくんだ」。長い試行錯誤を経て、イメージに合った香りの組み合わせを探していくのかと思いきや「20年ものキャリアがあるので、それほど時間をかけずに作れるようになったよ」と微笑む。そこはベテランならではの匠のわざなのだろう。

(c)Maison Francis Kurkdjian Paris

■時の流れさえも味方につけて

 香水を作る上で一番大事にしているのは「時間」という概念だ。トップ、ミドル、ラストと香りが時とともに変化していくのはもちろん、「新しいフレグランスを生み出すにも時間が必要だし、またその価値を判断してくれるのも後世の人たち。時の流れというものを大切なキーワードとして考えている」。それは「香水の原点」とも言える17世紀のマリー・アントワネットの香水を再現し話題を集めた、クルジャンらしい哲学と言えるだろう。

 また特徴的なのはそのパッケージだ。スクエアボトルにロゴのみが刻まれたユニセックスなデザインは潔いほど。ほとんどのメジャーブランドが華やかなボトルで香りを演出する中、シンプルなボトルにこだわっている。「私の仕事はあくまでフレグランスを作ること。一番シンプルな形で、余計な飾りのないものに、私の力を込めて作った香りを閉じこめたい」。そのこだわりにはトップパフューマ―ならではの誇りと自信がうかがえる。

クルジャンの作品は「香りのワードローブ」とも呼ばれている(2016年12月5日撮影)。(c)MODE PRESS/Mana Furuichi

■香りを使った舞台演出にも挑戦!?

 2008年にはフランス最高の勲章であるレジオン・ドヌール勲章(Legion d'Honneur)のシュバリエ(Chevalier)を授与されるなど、すでに輝かしい実績を持つクルジャン。だが「やりたいことはたくさんある。まだまだ挑戦することだらけだね」と好奇心は衰えを見せない。「今、フランスで来年5月に上演される舞台の仕事に取り組んでいる。香りが重要な役割を果たす演劇で、観客がいくつもの香りを劇場で体験することができるんだ」。さらにオーストラリアで行われるヴェルサイユ展でも香りの演出をし、展覧会のためのオリジナル香水も制作した。

 彼が香水業界に興味をもったきっかけは、妹が集めていた香水瓶のコレクション。さらに母親のつけていた「クレージュ(COURRÈGES)」の“アンプラント”は最初に意識した香水であり、その後、13歳のフランシス少年は調香師を志すようになったという。身につける香りは一人ひとりの人生の一部となり、まわりの人たちの記憶にも深く刻まれていく。それは彼の大切にしている「時間」の概念とも強く結びついていると言えよう。クルジャンの香りが生み出すドラマチックストーリーは、これからも時空の旅を繰り返し、私たちを魅了していくに違いない。

■お問い合わせ先
ブルーベル・ジャパン株式会社 香水・化粧品事業本部/03-5413-1070

■商品概要
・アクア セレスティア オードトワレ
70mL 20,500円
200mL 34,500円
※すべて税抜
発売:2017年2月15日

■関連情報
・ブルーベル・ジャパン公式HP:http://cafedesparfums.jp/brand/MAISON_FRANCIS_KURKDJIAN/
(c)MODE PRESS