新たな「カワイイ」の潮流? ラバーオートクチュールの世界
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■きゃりーぱみゅぱみゅのステージでも
ラバーウェアとメインカルチャーの懸け橋となったのも「クラゲ」の功績だろう。ポップアイコンである歌手のきゃりーぱみゅぱみゅ(Kyary Pamyu Pamyu)が2013年のNHK紅白歌合戦で披露したパフォーマンスにおいてダンサーが着用していたのは「クラゲ」によるラバースーツ。ほかにも映画やCM、雑誌などさまざまなシーンで作品を提供している。
きゃりーぱみゅぱみゅのスタイリストおよび衣装デザイナーの飯嶋久美子(Kumiko Iijima)は、「クラゲ」を「世界一の技術」と称賛。「ラバーをレースのごとくカットする職人技と、ラバーの魅力と素材を100%生かした衣装デザイン」を高く評価する。
また、同じくきゃりーぱみゅぱみゅの美術演出を行うアートディレクターの増田セバスチャン(Sebastian Masuda)は、「服飾素材を使わずにファッションを表現している。どこに行っても、同じ形の同じ服が並んでいる昨今、身体を装飾するという観点から、この社会に対して問題提起できている」と語る。
■カワイイ文化の発祥の地で
今秋、増田とダイヤモンドダイニングが手がける東京・原宿のレストラン「カワイイモンスターカフェ(Kawaii Monster Cafe)」のプロジェクトとして「クラゲ」のファッションショーが開催された。カワイイ文化の発祥地である原宿で、ピエロや海賊、花魁など多様なテーマのラバーウェアをまとったモデルたちがパフォーマンスを披露し、喝采を浴びた。
カワイイ要素を詰め込んだテーマパークのような会場と、アンダーグラウンド文化という印象の強かったラバーウェアは、一見ミスマッチと感じる人もいるかもしれない。だが「もともとカワイイというのは、海外の人たちが日本からやってくるどこかクレイジーなものや現象を賞賛するときに使っていた『感嘆詞』。しかし世界的な社会現象になり、最近はカワイイ=キュートやカラフル、子どもっぽさといった意味に使われている」と増田は説明する。そういった意味で、一番大事な部分は「クラゲ」のクリエーションこそが体現しているとも言えるだろう。
■ラバーファッションの未来
ショーを終えたキドは「ラバーという言葉だけが先行しているが、実際に知っている人はごくわずか。だから一人でも多く見てもらえればと思った。今日のショーは集大成ではないが、ラバーウェアを知らない人からコアな人までが楽しめるような構成を心掛けた」と語る。
日本ではまだ発表する場も限られるというラバーウェアの世界。だが単なる「フェティシズム」の枠にとどまらない「クラゲ」のラバーオートクチュールは、真のカワイイスピリットを継承する新たなカルチャーとなって世界に浸透していくのかもしれない。(c)AFPBB/Fuyuko Tsuji