【7月29日 MODE PRESS WATCH】「クッキーを超えたクッキー」・・・そんな言葉が似合うクッキーブランドがある。「アントルポ(icing cookie ANTOLPO)」は今、その唯一無二のクリエーションで注目を浴びるアイシングクッキー専門店。実店舗はなく、オンライン注文のみを受けている形だが、「SHISEIDO」や「シュウ ウエムラ(shu uemura)」などビッグブランドからのオーダーもひっきりなしの人気店だ。

(c)icing cookie ANTOLPO

 アイシングクッキーとは、焼いたクッキーの表面を卵白や砂糖を着色してデコレーションしたもの。手がけるのは神奈川県出身のパティシエ・小倉千紘(Chihiro Ogura)だ。もともとは焼き菓子屋を経営していたが、アイシングクッキーのクオリティが評判となり、それ専門へと転向。苗字である「小倉」にかけて、「Petit(プティ=小さい) Entrepot(アントルポ=倉庫)」と名乗っていたが、のちに読みやすく単純化し、造語の「ANTOLPO(アントルポ)」という名前となった。

 製菓専門学校・エコール辻東京を卒業後、人気洋菓子店「ベルグの4月」の姉妹店「Happy Birthday」で修業したという実力派。「小さい頃からお菓子を作ることが好きだったし、細かいものを工作することも好きだった」。その両方を活かせるアイシングクッキーは小倉にとって天職と言えるだろう。

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■人気に火をつけたSNSの威力

 その作品が注目されたきっかけはSNSだ。「店舗がないので、作ったクッキーを見てもらうためにSNSを始めた。多くの方からの反応のおかげで創作意欲が沸く。軽い気持ちで始めたSNSだったが、今では重要な存在となっている」とその反響を語る。「アントルポ」の新作が発信されるツイッターやインスタグラムでは多くのフォロワーがその動向を見守っている。

 今年5月、江戸時代の絵師である伊藤若冲(Jakuchu Ito)の「紫陽花双鶏図」、「動植綵絵 南天雄鶏図」、「雪梅雄鶏図」をアイシングクッキーで製作し、インターネット上で話題になったのを目にした人も多いだろう。超絶技巧とも言える精巧な装飾が話題になるのも無理はない。

(c)icing cookie ANTOLPO

■1枚のクッキー製作に4時間も

 モチーフの面白さやずば抜けたセンスが絶賛される中、小倉本人は「ユニークなものを作っているという意識はあまりない」と語る。指定注文ではない場合の題材選びは、自分が作りたいものがメイン。題材を思いついたらデザインをおこし、図鑑や本を参考にすることもあるという。スタッフはおらず、デザインからクッキー型まですべて1人で製作しているというから驚きだ。

 製作時間はデザインにより大きく変わり、簡単なものであれば10分以内だが、細かいデザインの場合は1個に3~4時間以上かかる場合もある。小さい頃から造形教室に通っていたという小倉ならではの細やかなデザインは、クッキーの概念をも大きく揺るがすクオリティだ。

(c)icing cookie ANTOLPO

 しかし、制約はもちろんある。オリジナル作品は自由に作っているが、オーダーの場合は注文内容や社風などに沿ったデザインとなることを重要視している。さらに、発送品の場合は折れやすい細い部分がない型にすることも重要だ。「割れないように、そして量産できるようにという大きな制限がある中で、いかにベストなデザインにできるかを大切にしている。今後も、より満足できる完成度のデザインを突き詰めたい」

(c)icing cookie ANTOLPO

「食べるのがもったいない」「まさに芸術作品」と言われている「アントルポ」のクッキーたち。アイシングクッキーの可能性に挑戦する小倉の作品は、これからも人々に驚きと喜びをもたらしてくれることだろう。オーダーメイドクッキーの注文は「アントルポ」の公式サイトから問い合わせが可能だ。

■関連情報
・アントルポ公式サイト:http://www.antolpo.com/
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