【11月29日 AFP】かつてフランス南西部に富をもたらし、英詩人チョーサー(Chaucer)の詩にうたわれ、ナポレオン(Napoleon)軍の 制服に使われたりした青い染料「大青(たいせい)」を、米国生まれのドゥニーズ・シメオンランベール(Denise Simeon-Lambert)さん(60)らが復活させた。

 シメオンランベールさんはこの染料を、南仏で話されているオック語の単語を使って「パステル」と呼び、「私たちがこの『パステル』をファッション の世界に復活させたのです」と胸を張る。「ディオール(Dior)」や「シャネル(Chanel)」といった有名高級ブランドも使っているという。

 その昔、同地域の染料業者らに大きな富をもたらしたことから「青い金」と呼ばれていたこの染料は長らく忘れ去られていた。その世界的な名声を取り戻そうとしている事業主の一人が、シメオンランベールさんだ。現在では遠くアジアにも顧客を抱えている。

 とはいえ、フランスで育ちベルギー人と結婚したシメオンランベールさんが、植物由来で薬効もあるとされるこの調合物に出会ったのは全くの偶然だった。

 学名イサティス・ティンクトリア、英語でウォード(woad)と呼ばれる植物ホソバタイセイから採れるこの染料は17世紀にあまり使われなくなった。新航路の開通で、色味が濃く生産しやすいインドの藍が入ってきたからだ。その藍も20世紀に合成染料に取って代わられた。

 1994年、シメオンランベールさんは夫と共にベルギーを去り、フランス南西部ジェール(Gers)県のレクトゥール(Lectoure、人口3700人)にある15世紀の皮なめし工場に引っ越してきた。

 新居の雨戸の明るい色味に触発され、この大青という染料について調べ始めたところ「完全なとりこ」になり、まもなく家族で事業を始めた。

 シメオンランベールさんによると、大青が最初に使われ始めたのはギリシャ、トルコ、エジプトで、「人々は昔からその色に魅了されていた」という。「草は緑で花は黄色いのに、青い色素を生み出すのです」