■人々を幸せにしたい

「ファッションは大好きです、でも毎シーズン、毎日毎日一生懸命働かなければなりません」と高田氏。最近はデザイン全体というものにより力を入れているという。クリエートするものが服、インテリア雑貨、グラフィックにかかわらず、「私は常に明るく楽しいエスプリを生み出そうと努力しています」「人々を幸せにしたいんです」と語っている。

 高田氏のインスピレーションの源は、ストリートや映画、展覧会に加え、昔ながらの人間観察だという。ただ、あなたのファッションアイコン、最も尊敬する人は誰かという質問に対しては、「ずっと(イヴ・)サンローラン(Yves Saint Laurent)を敬愛してきました」と即答した。「しかし最近は、優れた若いデザイナーもたくさんいます」

 一方で、自分が切り開いてきたファッション業界とは様子が一変していることも認めている。「ものすごく変わりました」「ポジティブな意味です。ただ同時に、街で新コレクションのディスプレーを見ていると、昔を思い出すこともよくあります。今はデザイナーを特定するのが難しいこともあります。以前であれば、米ニューヨーク(New York)、英ロンドン(London)、イタリア、日本に行けば、ファッションはそれぞれ少しずつ異なっていました。今はどこに行っても同じようなスタイルです。素晴らしいことではありますが、多様性とアイデンティティーに若干欠けているという気もします」

 衣料業界の爆発的な成長を目の当たりにしてきた高田氏は、「私は幸運でした、1970年代という良い時代に始めましたから。当時はメゾンもプレタポルテもそんなにはありませんでした」と謙虚に語った。「今日の業界は別物です」

 しかし運の良さだけでここまで来れるだろうか?同ブランドの世界的な成功は、そうではないことを示している。しかも、今日の若きデザイナーたちをうらやんでいるようには聞こえない。「すごいことですよ」と高田氏は笑った。「ファッションが本物の産業になりつつあるということですよ。70年代にはそこまでではありませんでした、だからこそ目立つのが今よりも簡単だったんですね。私は本当にラッキーでした」(c)Relaxnews/AFPBB News