【5月15日 AFP】フランスの高級ブランド「ルイ・ヴィトン(Louis Vuitton)」が7日、米カリフォルニア(California)州パームスプリングズ(Palm Springs)でクルーズ・コレクションを発表した。

 同ブランドのクリエイティブ・ディレクター、ニコラ・ジェスキエール(Nicolas Ghesquiere)が手掛けた最新のコレクションには、「LVMHモエ・ヘネシー・ルイ・ヴィトン・グループ」のベルナール・アルノー(Bernard Arnault)会長兼最高経営責任者(CEO)をはじめ、仏大女優カトリーヌ・ドヌーブ(Catherine Deneuve)から米ラップ歌手カニエ・ウエスト(Kanye West)まで、約500人ものゲストが駆けつけた。世界のファッションシーンにおいて、ロサンゼルス(Los Angeles)が重要な位置を占めつつあることを改めて証明するかたちとなった。

 会場となったのは、砂漠の中のボブ・アンド・ドロレス・ホープ・エステート(Bob and Dolores Hope Estate)。背の高いモデルたちは、会場となった建物のなかの庭園に並べられた椅子の合間を練り歩き、髪を風になびかせながら闊歩した。砂漠のカラートーンのロングフレアドレスには、ヒップの辺りにカットアウトデザインが施され、ベルトやスタッズ、レースなどがアクセントになっていた。ほかには、柄物のジャンプスーツやロンパースもあり、中にはインディアン・ファブリックを彷彿させるデザインも目立った。

 コンクリートの建物にフューチャリスティックなモチーフがあしらわれた大邸宅は、1973年に米建築家のジョン・ロートナー(John Lautner)が手掛けた傑作だ。

 ニコラはショーの前夜に開かれたイベントでAFPの取材に応じ、「この邸宅の残忍なまでにラディカルな外装と、よりソフトで装飾的なインテリアのコントラストに大いに刺激を受けました」と語った。

 「バレンシアガ(Balenciaga)」復活の立役者としての輝かしい功績の後、2013年末に「ルイ・ヴィトン」に移籍したニコラは、今回のコレクションを発表するに当たり、「砂漠に暮らす女性たちのコミュニティー」をイメージしたと話している。

流れるような美しいシルエットに、ところどころレザーを用いた作品。今回意識したのは「ルイ・ヴィトンは、アクティブで現代的な女性を重視しているブランド」だということと、マテリアル(素材)を組み合わせることで「いろいろな要素が混ざり合う、そんな感覚を生み出したかった」とニコラは話す。

 ショーが始まる前、招待客は邸宅の中に招き入れられた。そこには英歌手デヴィッド・ボウイ(David Bowie)を思わせるようなグラムロックスタイルのドレスをまとったモデルたちが、生ける彫刻さながらの姿で歓迎した。

■「モダン」カリフォルニア

 今年に入ってラグジュアリーブランドがカリフォルニアでショーを行ったのは、「トム・フォード(Tom Ford)」と「バーバリー(Burberry)」に次いで「ルイ・ヴィトン」が3社目になる。先の2ブランドのショーにも、映画界や音楽界から多数のゲストが駆けつけた。

 パームスプリングズが急速な再興を遂げる中、カリフォルニア州全体がファッション界の大舞台の役割を取り戻しつつある。

「1950年代、パームスプリングズは『モダン』の象徴でした。その後衰退しましたが、いま真の再生を果たしています」と語るのは、「ルイ・ヴィトン」のマイケル・バーク(Michael Burke)CEO。「ニューヨーク(New York)」は世界の文化の中心地で、欧州と非常に強くつながっています。全世界的な意味では、米国におけるモダンなものを代表するのはカリフォルニアだと思いますよ」

「サンローラン(Saint Laurent)」のデザイナー、エディ・スリマン(Hedi Slimane)は、生活と仕事の拠点をロサンゼルスに置いており、トム・フォードもロスにも家を持っている。米国人デザイナーのモニーク・リュイリエー(Monique Lhuillier)やケイト(Kate Mulleavy)とローラ(Laura Mulleavy)のミュラヴィー姉妹がブランド「ロダルテ(Rodarte%%)」を立ち上げたのもカリフォルニアだった。

 ファッション誌「ヴィジョネア(Visionaire)」の共同創刊者セシリア・ディーン(%%Cecilia
Dean%%)氏は、「新しいアイコンやトレンドセッターたち、デザイナーやセレブたちがいることで、様々なファッションがこの街には根付いています。もはやスウェットパンツだけの都市ではないのです」と語る。

 クルーズ・コレクションは、ファッション界では軽視されることもしばしばで、メインとなる春夏、秋冬シーズンの間にショーが開かれるなど、過去には範囲も限定されていた。

「ヴィトン」はクルーズコンセプトの拡大を目指し、各地を巡ってショーを開催する狙いだ。ちなみに、昨年のクルーズコレクションは、やはりスターやセレブが集まるモナコで発表した。

「セールスという観点からすれば、クルーズは最も重要なコレクションなんです」とバークCEOは語る。

 ファッションショーを魅力的な場所で開くことは、ブランドのイメージアップにつながると同時に、クライアントとの絆を強める手助けにもなる。今回のパームスプリングでのショーには、全米だけでなく、中国やカナダ、南米からも重要な顧客たちが集められた。

 イベント開催費用は数百万ドルに上ることもあるが、バーク氏はそれだけの価値は十分にあるとみている。「パリ(Paris)では、ファッションショーは主にマスコミやバイヤー向けで、クライアントは無視されかねません。ここ(パームスプリングズ)では、非常に洗練された雰囲気の中で3日間にわたってクライアントを魅了するチャンスが得られました。通常のファッションウィークではできないことです」(c)AFP/Veronique DUPONT