【3月21日 AFP】一般的な美の概念に立ち向かう日本人デザイナーがいる。東京ファッションウィーク(Tokyo Fashion Week)で発表したコレクションでは、視覚障害者のモデルや義足をつけたモデル、車いすに乗ったモデルらが、気軽に着こなせる服でランウェイに登場した。黄色のウィッグを着用したモデルもいた。

「テンボ(tenbo)」というブランド名でこの斬新なショーを発表したのは、デザイナーの鶴田 能史(Takafumi Tsuruta)。健常者と障害者のモデルを合わせて採用し、独特なデザインの服を発表した。

「私たちは『ピープルデザイン』をテーマに掲げているブランドです」とショー後に鶴田は語った。「私は世界中のすべての人が着られる服を目指しています。おしゃれで着やすい服を作るのは、ファッションの責任だと思います」

「DREAM(夢)」をテーマにした今季のコレクションでは、マグネットボタンを使ったディテールや、リバーシブルのセーターなどが発表され、典型的なハイファッションよりも広い層に向けてアピールされた。

 生まれつき左足以外の手足がない佐野有美(Ami Sano)さん(24)はショーの前、バックステージで、ファッションウィークでモデルをするとは「本当に夢にも思わなかった」と語った。

 佐野さんは満員の観客で埋まったショーのフィナーレに、白いウェディングドレスを着て、車いすで登場した。「シンプルな服は素敵です。色々な着こなしを楽しめますし、こういうタイプのデザインは多くの人が重宝すると思います」

 佐野さんはAFPの取材に対し、日本では健常者と障害者の間に「いまだに壁」があるが、「テンボ」のショーがそうした偏見に立ち向かう一助になると思うと語った。「人々に希望を持ち続けてほしいです」