■世界に羽ばたく才能も積極的に支援

 だが東京ファッションウィークの主催者である日本ファッションウィーク推進機構にとっては、有名デザイナーがパリの方を好む傾向にあること自体は問題ではないようだ。「日本で準備してから世界市場に出るためにパリへ向かうのは自然なこと。むしろ海外の市場を目指す人たちを応援したい」と、同ファッションウィークの国際ディレクター、信田阿芸子(Akiko Shinoda)さんは言う。彼女によれば、海外進出の理由の1つは日本国内の人口減と市場の縮小だ。それに比べて海外では、外国人バイヤーの目に触れる機会が増えると語る。

 漫画やハローキティにインスパイアされたデザインや、伝統的なものからアバンギャルドまで、東京はその創造性やストリートスタイルを自負している。一方で、ソウルや上海といった都市がファッションウィークに資金をつぎ込み、アジアにおける東京の地位を脅かしているのも認識していると、信田さんは続ける。「いま東京がトップであるのは間違いないが、タイやインドネシア、韓国の動きも常に意識しています。各国政府は自国で開催するファッションウィークに相当の資金を投じているからです」

 「ハナエモリ(HANAE MORI)」の新コレクションを手掛け、自身のブランド「エー ディグリー ファーレンハイト(A DEGREE FAHRENHEIT)」でも作品を発表した日本人デザイナーの天津憂(Yu Amatsu)は、東京には「素晴らしい職人」が集まっていると語る。「しかし、私たち日本人は国民性もあって、少し控えめなことが理由のひとつでしょうね。それもあって世界に出ることに苦労しているのも事実です」