■「日常の癒やし」としてのメイク

 Goshayeshi氏によると、「預言者ムハンマド(Prophet Mohammed)自身も香水を使っていた」という。

 「ヒジャブ」と呼ばれるスカーフの着用が義務付けられていることから、外出時には宗派にかかわらず髪と全身を覆い隠さなければならないイラン人女性にとって、メークは自己表現の一つの形でもあり、その傾向は地域ごとに異なる。北部ではカラフルなマスカラと花の香りの香水が人気なのに対し、南部の女性は黒のマスカラと、より濃厚なムスクの香りを好む。

 また昨今はイラン人男性の間でも、化粧品を使用する人が増えてきている。Goshayeshi氏によると、「男性も若く見られたいう願望から、以前に比べて肌の手入れに気を使うようになった」という。

 深刻な経済危機に見舞われている同国の人びとにとって、化粧品は日常の問題を忘れさせてくれる癒しの存在になっているようだ。

 理学療法士のフォルーグ・ヘイダリ(Forough Heidari)さんは、「メイクは人に良い影響を与えてくれます。気分がすっきりして落ち着くし、楽しいのでメイクは大好きです」と語った。

 そしてイラン市場は、決してまだ飽和状態とは言えない。化粧品ブランド「カプリス(Caprice)」の創業者でディレクターのビスタ・ババール(Vista Bavar)氏は、国内外の約20ブランドが参入しているものの、「中・低価格市場で高級商品を展開していく余地はある」とみている。

「イランの若年層は厚く、その多くが両親と一緒に暮らしているため、そこまで出費を気にしなくて済む」ことから、美容商品にお金を使うことができると、ババール氏は分析している。(c)AFP/Cyril JULIEN