【8月12日 AFP】スカーフ着用を義務付けられたイラン人女性たちは、おしゃれをするにも制限が強いられる。しかし、1ヶ所だけ露出が許されている部分がある。それは、「顔」だ。

 イランでは、毎日化粧を欠かさないという女性が欧米諸国に比べても多い。彼女たちにとって顔は、とがめられる恐れのない、自分の美を披露できる絶好のチャンスなのだ。

 女性の人口が3800万人を超える同国の化粧品市場の売上額は、中東ではサウジアラビアに次いで第2位、世界的に見ても第7位となっている。

 ファッションデザイナーのティナ・ザリンナム(Tina Zarinnam)は、「イラン人女性は朝起きたらまずメイク。体調が悪い時でさえ、表では美しくなくてはいけないと思っているほどです」と語っている。

 「ランコム(Lancome)」はここ数十年イラン市場には参入していなかったが、最近再進出を発表。各業界の企業代表やアーティストら約400人を招待し、首都テヘラン(Tehran)最大のホテルの一つで記念パーティーを開催した。

 1979年のイラン革命以来、盛大に市場進出を果たしたのは欧米大手ブランドではランコムが初めてだった。しかし、1980年代にイランへの禁輸措置を打ち出して以来、米国の化粧品ブランドの商品は、イランの公式市場では販売されていない。

■前途有望な市場

 化粧品業界の識者らによる推定では、イラン人女性はマスカラを月に約1本消費するとされ、4か月に1本というフランス人女性に大差をつけている。

 イランでの「ランコム」の代理店は、正規販売大手の香水チェーン「サフィル(Safir)」で2010年に創業し、現在国内全土で約20店舗を展開している。

 「サフィル」広報によると、「市場は急成長しており、約数百万ドル規模」だというが、売り上げの内訳は正規と非正規の販売ルートが半々だという。

 同社のPegah Goshayeshi社長は、イランで売買されている商品のうち、正規の商品は4割程度にすぎず、残りの6割は、未許可の業者が市場や小さな店舗で違法に販売しているものだと語った。

 規制が厳しく、当局の関係者による承認を得なければならないことから輸入コストは高い。しかしイスラムの教義では香水も化粧品も禁止されていないため、化粧をすること自体は法律違反には当たらない。