【9月20日 AFP】デザイナーのエデン・ミラー(Eden Miller)が今月6日、NYコレクション初となるプラスサイズのコレクションを発表した。

 痩せすぎともいえるほど細身のモデルがランウェイを歩くことが一般的なファッションの世界で、エデンはふくよかなモデルにカラフルでグラマラスなドレスを着せた。大胆な色使い、大柄のプリント、横縞の入ったロングドレスなどを発表したエデンは、「大々的に発表することを恥ずかしいと思いたくなかった」と語った。

「他の人もチャンスがつかめるようになるくらい、私のコレクションの出来が良かったら嬉しい。セクシーで美しい、自分の体形をものにしている女性を表現したかったんです。言い訳めいた気持ちなんてありません」

 エデンのコレクションは、NYコレクションが開催されたリンカーン・センター(Lincoln Center)の中でも一番小さな会場「ボックス(Box)」で発表されたが、スタイリスト、プラスサイズモデル事務所の重役、バイヤー、ジャーナリスト、ふくよかな体形のファッショニスタたちで満員だった。

■業界人からの称賛

「ファッション業界にとって大きな一歩」だと、デザイナーのメーガン・オコナー(Meaghan O'connor)は語った。

 今回のショーのモデルを手配したプラスサイズモデル事務所MSAに30年間勤務しているスーザン・ジョーゼット(Susan Georget)さんは「今まで長い時間がかかっても実現しなかったことが、一夜で成功した。待ちに待った瞬間でした。今まではほんのわずかな進歩しかなかったけれど、今回のショーでファッション業界における私たちの立場が確立した。ファッショナブルで、セクシーで、素晴らしい女性として」と語った。

 プラスサイズ女性に向けたウェブサイト「マディソン プラス(MADISON PLUS)」を運営するエイミー・チェシャー(Aimee Cheshire)さんも喜びを露わにした。「やっと私たちの存在が注目を浴びるのです。これは長年追い続けてきた夢でした」

 デザイナー歴25年のミラーは、4月に自らのブランド「カビリア(Cabiria)」をローンチし、「予想を超える高評価」を得た。そして7月、非営利団体「ファッション・ロー・インスティチュート(Fashion Law Institute)」 からショー開催の話を持ちかけられた。同団体は、資金不足のために自力ではショーを実施できない有望なデザイナーらを支援している。

 ミラー自身、自分の体の豊かな曲線美に誇りを持っており、生地の裁ち方や服を見るアングル、服のシルエットでどのように豊満なスタイルを引き立たせるかを情熱的に語った。「プラスサイズの女性に考慮した、シンプルなカッティングにしています。着る人が美しくなれると感じられたなら、それが私にとって何よりのプレゼントであり、原動力なのです」

 プラスサイズモデルは国際的なランウェイではまだまだ珍しいものの、パリやミラノでは時折見かけられる。一方ロンドンでは、一般的な体形の人向けのファッションショーが行われることが多い。

■偶然の出来事

 ニューヨークで初めてのプラスサイズのショー開催は、ほとんど偶然と言っても良い出来事だった。

「エデンに初めて会ったとき、彼女は自分でデザインしたドレスを着ていました」とファッション・ロー・インスティチュート の設立者、スーザン・スカフィディ(Susan Scafidi)教授は語った。「その時に『プラスサイズにしては良い服ね』ではなく、『良い服ね、私のサイズでも作ってくれないかしら』と思ったんです」

「実は、後になってカビリアがNYコレクション初のプラスサイズ・ラインになるということに気付いたんです。思いがけない偶然でしたが、それもプラスに働きました」

 スカフィディ教授によると、ファッション界において、細身のモデルかそうでないモデルかは、ゲイかそうでないかということと同じくらい大きな違いだという。「細身のモデルと細身のデザイナーが表舞台で活躍している間、プラスサイズのモデルやデザイナーは目立たないように隠れていました。ですからプラスサイズのコレクションが表舞台で披露されることを非常に嬉しく思っています」

 アメリカサイズの12~24(日本サイズで15号~27号)の女性たちをターゲットとして設定するミラーだが、大胆なプリントを敬遠することはなく、むしろ大好きだと語る。「もしも、ふくよかな体形なら、わざわざ細く見えるよう取り繕う必要はない。そんなことは意味がないことなのです」(c)AFP