■生き残りを賭けた「ライフスタイル路線」

 ライフスタイル・マガジンの台頭は、既存のメディアにも影響を与えている。「食の雑誌は、ライフスタイルに重点を置く新しいアプローチで読者獲得に成功している」と『ウォールストリート・ジャーナル』2013年4月30日の記事は伝える。

 例えば、2011年、コンデナスト社が発行する料理雑誌『ボン・アペティート』は、コンテンツの大幅な見直しを行った。新発行人のパメラ・ドラッカーマン氏は「複雑なレシピやスタジオ撮影の写真よりも、旅行、有名シェフ、食文化に焦点を当てた編集に努めた」という。その結果、米国雑誌業界全体は今年第1四半期に広告ページ数の約5%を失っているが、同誌は広告ページを約38%増やしている。

 また、ハースト社でも同じような動きが見られる。「料理雑誌の刷新に挑戦し、事細かなレシピやマーサ・スチュワートやレイチェル・レイなど個々のパーソナリティーではなく、有名シェフ、食のエンターテインメント、ライフスタイルに重点を置く」方向を示しているという。

 これらの動きに対して、広告代理手大手WPP傘下のグループM(マインドシェア、メディアコムなどの持ち株会社)のプリントバイヤーのジョージ・ジャンソン氏は「料理雑誌はもはやレシピだけを扱っているのではない。料理は旅行、エンターテインメント、家族など他の話題全体への入り口だ」と述べ、ギャップ傘下のカジュアルブランド、バナナ・リパブリックのマーケティング担当副社長クリス・ニクロ氏は「ファッショナブルなライフスタイルとしての食のアイデアを提供しており、単にレシピ読者だけにとどまらない広範な読者層をつかんでいる」と述べている。(参考資料:その2)http://jp.wsj.com/article/SB10001424127887323343804578453701060523958.html

 流通の面でもこのライフスタイル化の波が止まらない。セレクトショップのライフスタイル・ショップ化という新業態は長らく続いており、勢いは増している。

 日本のジュングループが今秋立ち上げる「サロン・アダム・エ・ロペ」、サンエー・インターナショナルが6月に自由が丘にオープンさせた「キャス・キッドソン」路面店、ロンハーマンが6月に「MARK IS みなとみらい」内にオープンさせた「RHC ロンハーマン」などは、いずれも構成比率として食関連と雑貨関連商品をそれぞれ20~30%も取っており、ファッション以外の要素を大幅に加えている。最近では、店内にカフェを設置するケースも少なくない。

 大型商業施設にも影響は及んでいる。新宿伊勢丹本店の大改装にあたって店長の中陽次氏は「これまで“ファッションの伊勢丹”としてやってきましたが、時代が変遷して、今は衣食住が単体で動くのではなく、ライフスタイルを提案していかなくてはならない」という。

 4月に開業した大型商業施設グランフロント大阪のコンセプトは「ファッションビルではなく、百貨店とも違う新しい専門店大集積施設として、最良の店を選択した。ファッション、インテリア、生活雑貨など様々な業種・業態を集積して“都心におけるライフスタイル提案”を追求した」という。