ネイサンがプロジェクトと言うとおり、その活動は誌面以上に幅広い。現在第8号まで出ている本国版に加え、先月発売された日本語版、さらに今夏、ロシア語版と韓国語版も刊行予定。10月にはレシピ集『The Kinfolk Table』も出る。かつ、東京やアメリカ、スペインやフランスなど、世界各地で毎月20~30ほどのワークショップやディナーイベントを、様々な企業やクリエイターたちとコラボレーションしながら行なっている。美意識はストイックながらも、ビジネスマンとしてかなりやり手と思えた。

「現在、人々はメールやFacebookなど、多くの時間をコンピュータとともに過ごしており、そのような生き方の姿勢が問われていることを誰もが実感している。実は、それこそが、『キンフォーク』が人々に読まれている理由のひとつではないかと思う。『キンフォーク』が、人々にコンピュータから離れた大事なことを思い出させ、実際に手を動かすこと、触れられることに対する評価が高まっているんだ。そして僕らは、雑誌の中で謳っている価値観の、まさしく一番の体現者になるよう努めている」

 この『キンフォーク』を筆頭に、インディペンデントなライフスタイル・マガジンは世界中で急増している。ニューヨークで創刊されたばかりのクラフトマンシップある生活を提案する『Atlas Quarterly』、西海岸の女性ふたりのブログから発展した、日常を新たな視点で楽しむことを提案する『3191 Quarterly』、スペインを拠点に世界中のクリエイティヴィティれるライフスタイルを伝える『Apartamento』、カナダ発のフードマガジン『GATHER journal』、同じくカナダ発のライフスタイルを考える季刊誌『ACQTASTE』、ベルリン発のインテリアを軸にしたライフスタイル・マガジン『The Weekender』など、いずれもここ数年以内に創刊されたものばかりで、ライフスタイルが中心的題材になっている。そして、それらの多くは消費に疲れた先進国の人たちの次の価値観が垣間みれる。