【2月27日 AFP】(一部更新)米ハリウッド(Hollywood)で26日に開催された第84回アカデミー賞(Academy Awards)授賞式で、モノクロの無声映画『アーティスト(The Artist)』が作品賞を含む5冠を達成し、今年の映画賞シーズンを有終の美で締めくくった。

 同作品のその他の受賞部門は、主演男優賞(ジャン・デュジャルダン、Jean Dujardin)、監督賞(ミシェル・アザナヴィシウス、Michel Hazanavicius)、作曲賞、衣装デザイン賞の4つ。 『アーティスト』より1つ多い11部門にノミネートされていた『ヒューゴの不思議な発明(Hugo)』も5部門で受賞したが、すべて技術系にとどまった。

 アザナヴィシウス監督は、監督賞の受賞スピーチで「私は世界一幸せな監督だ」と喜びを表した。

■ハリウッドへのこだわり

 プロデューサーのトマ・ラングマン(Thomas Langmann)氏は先日、AFPのインタビューで、米国のスティーヴン・スピルバーグ(Steven Spielberg)監督に、今のハリウッドで無声映画を作るなんて「不可能」であり、モノクロならなおさらだと言われたことを明かしている。

 フランス映画界の有力者の理解を得るのも簡単ではなかった。しかし、同国の映画製作における資金調達のシステムとラングマンの粘り強さで、アザナヴィシウス監督はハリウッドでの撮影に必要な900万ユーロ(約9億8000万円)を得ることができた。

 ラングマンは「私には他の場所で撮影することは考えられなかった。ハリウッドの物語を語るのなら、ハリウッドで撮らなければ」と話した。

■大物プロデューサーがバックアップ

 アザナヴィシウス監督が1月に行われたゴールデン・グローブ賞(Golden Globe Awards)授賞式で、ハリウッドへの「ラブレター」だと表現した同作品の成功には、米国の大物プロデューサー、ハーヴェイ・ワインスタイン(Harvey Weinstein)の目にとまったことも大きく関係している。

 アザナヴィシウス監督はAFPのインタビューで次のように語っている。「ハーヴェイ・ワインスタインは素晴らしい仕事をしてくれた。映画や観客についての考え方、時宜を得た市場戦略など、とにかく卓越している」

■求められたのはノスタルジア? (※以下、映画の結末を含みます)

 興行収入は北米では2800万ドル(約23億円)ほどだが、世界では7300万ドル(約60億円)。批評家や映画業界からの評価も高まっている。アメリカンシネマへのオマージュとして作られる映画は多いが、これほど温かく受け入れられる作品はない。この作品のメッセージが現代に当てはまっていることが理由かもしれない。

『アーティスト』でジャン・デュジャルダンが演じるサイレント映画の大スター、ジョージ・ヴァレンティン(George Valentin)は、トーキー映画の到来に戸惑い、現実を見ようとせずに落ちぶれてしまう。しかし、かつては自分のファンで、トーキー映画の人気女優となったペピー・ミラー(Peppy Miller)のおかげで人生とキャリアを立て直す。

 現在、3Dという新たな技術が登場し、ヴァレンティンが経験したような転換期を迎えつつあるハリウッドも、この映画に自分たちのハッピーエンディングを投影したのだろう。

 不確かな未来に直面し、アカデミーの会員たちはノスタルジアの香りに引かれたのかもしれない。

 奇遇なことに、米国映画に賛歌を贈ったフランス人のアザナヴィシウス監督に対し、米国のマーティン・スコセッシ(Martin Scorsese)監督は、ジョルジュ・メリエス(Georges Melies)の技術をたたえる『ヒューゴの不思議な発明』でフランス映画の起源を称賛した。

 しかし、『アーティスト』が1920年代当時の無声映画そっくりに作られたのに対し、スコセッシ監督は最新技術を使った。69歳にして初めて、3Dで映画を撮ったのだ。(c)AFP/Romain Raynaldy