【8月29日 AFP】高齢者の脳は、受動的に記憶した情報よりも、試行錯誤の中から学んだ情報の方をよりよく記憶するとの初めての研究結果が、24日の「Psychology and Aging(心理学と老化)」電子版に掲載された。

 今回の発見に、教育者や認知リハビリ臨床医らは驚きを見せている。というのも、これまでの多くの研究では高齢者が情報を学ぶ途中で間違いをすることは記憶に悪影響を及ぼすとされ、そのため高齢者の記憶には受動的な方法が適しているとされてきた。

 研究の主席調査員、アドレーアン・シール(Andree-Ann Cyr)氏は、AFPの取材に「高齢者が、間違いと正しい情報との関係に意味を見いだせるときは、間違いが記憶プロセスにとって良い影響を及ぼす」ことがわかったと語った。

 カナダのベイクレスト老人医療センター(Baycrest Center for Geriatric Care)附属ロットマン研究所(Rotman Research Institute)の研究チームは、20代45人と平均年齢70歳の45人を対象とした記憶力テストを実施。それぞれの対象に対して2つの学習方法を実施した。

 1つ目の学習方法は、たとえば「花」との分類に対して「バラ」という単語を記憶してもらうというもの。もう1つの学習方法は、ある分類を提示して、それに関連する単語を参加者に言い当ててもらうという、試行錯誤を繰り返す方法だった。

 実験の結果、20代のグループも平均70歳のグループも、試行錯誤を行った方法のほうがよりよく単語を記憶していた。だが、特に高齢者の場合にそれが顕著だった。

 シール氏はこの結果について「高齢者はたいてい年齢による記憶力の低下を経験しているので、記憶力に障害を抱えていない若者よりも、より豊かな記憶を生み出す学習方法の恩恵を受けやすい」と説明した。

 この発見は、授業などでの高齢者向けの学習方法や、認知低下を遅らせるためのリハビリ方法などについて、重要な示唆を含んでいる可能性があると、シール氏は述べている。(c)AFP/Michel Comte