【8月24日 senken h】ODM(Original Design Manufacturer)――昨年ごろからファッション業界で盛んに使われるようになった、この言葉。OEM(商品を外部メーカーが依頼されて製造・生産すること)は多くの業界・業種でも用いられているが、言わばそれが進化したのがODM。生産・製造だけでなく、商品のデザインから完成までを請け負うクリエーティブメーカーとその機能だ。そんなODMの現場から、ファッション業界の陰のクリエーティブ職をクローズアップ。ヒット商品が生まれるリアルな現場を探った。

 優れたテレビ番組や映画にはそれを支える制作会社があるように、人気のファッションブランドにも実は、その商品をデザインから発案して生み出すODMメーカーという「裏方」がいる。彼らはファッションブランドの要望を受けて商品をデザインしたり、時には「こんな商品はどうですか」と自らブランドに提案し、ヒット商品を世に送り出す。言わばファッション業界を陰で支える企画のプロ集団だ。

 そんな注目を集めるODMメーカーの中でも、レディスの人気ブランドを手がけて躍進しているのがプリンシプルという会社。聞けば誰でも分かる日本の人気ブランドの商品を多く作り、評価を高めている。トレンドはすばやく変わる業界だが、良い服を作って売る。そのシンプルな原点だけは常に変わらない。アパレルの世界で思いっきりデザインしたい、洋服をとことん作りたい、という思いと情熱を形にできるODMの仕事。プリンシプルの社員たちも、その思いを胸に奮闘する。

■「アパレル業界のど真ん中で、等身大の勝負をする仕事」/プリンシプル

 午前10時、プリンシプルの社員たちが集まり企画会議がスタートすると一気に社内が熱を帯びる。各デザイナーが今のトレンドや取引先ブランドの要望を元に取り組んでいる商品企画案を社内プレゼンする。

 「それならネックにレースを着けたらどうか」「ボタンはこっちの方が良いかも」「その服ならこの生地が合うかも」など、時に笑いを交え、時に意見を戦わせながら議論が白熱する。ミーティングが終わるとデザイナーたちはその話を持ち帰り、また商品制作に取りかかる。こんな繰り返しの中からヒット商品を生み出す日々だ。デザインがブランド側に通り発売が決まると、生産工場を手配し店頭に納品するまでを請け負う。

 「相手先のブランドのあることだし、大変な仕事。でもODMメーカーは、一番純粋に等身大の自分を掲げて勝負できる。『今これがすてき』『これが売れる』と自分で感じたものを作って、クライアントのブランドに提案し、店頭でどれだけ売れたかで、次の仕事が来るかどうか。ある意味ではアパレルデザインのど真ん中かもしれない」と瀧谷岳人社長。もともとアパレルブランドで商品作りを担当していた。

 「ファッションの仕事というとブランドが注目されがちだが、実際に商品やデザインの立案に日々向き合っているODMの現場を見て、キラキラ光って見えた」という。「モノ作りという洋服の世界で一番、大事な舞台からアパレル業界を盛り上げることができる」と、プリンシプルを起業した。

 設立して6年。クライアント、ヒット作が増え、「想像以上の手応え」というプリンシプル。「僕たちのように、裏方だけどファッションデザインの“ガチンコ勝負”の仕事に興味を持ってもらえる人を増やしたい。一緒にODMの世界を盛り上げてくれる人を求めています」と話す。「特別なスキルとか資格があるのは素晴らしいけど、それは後からでも良い。まずは今の時代に何が求められているのか、それをどうやってデザインや商品として実現するのか。そのために、社内やクライアント、生地・縫製工場の職人たちとどんなコミュニケーションをしていくか。ファッションへの熱意と人柄の魅力があれば、ODMで活躍できる」と話す。

◆「洋服のデザインとビジネスのすべてを体験しています」
ODMの現場でファッションブランドを支える仕事の楽しさとは…。日々、服作りに向き合う現役社員に聞いた。

○洋服好きを増やすような仕事/金沢亜矢子さん:チーフデザイナー

 服をゼロから作って店頭に出す経験ができるのが、デザインメーカーならではの魅力。今、何が求められる商品か、それをリアルクローズとして売るにはどんな値段や仕様で出さないといけないか。そんなところまで洋服のデザイン・ビジネスを形にしている実感が持てるのが楽しい。その分厳しいですけど(笑)、プロの仕事が味わえる気がします。ファストファッションが流行った後、本当に良い服って何かを、たくさんのお客様に感じてもらえるデザインをすることが今の目標です。見た目が良いだけでなく、着心地とかコーディネートのしやすさとかで、気が付いたらずっと着ている――そんな服を作って、洋服好きを世の中に増やしたい。

○イメージをどう形にするか/加美祥子さん:デザイナー

 入社して1年4カ月。取引先のブランドさんからは、「何か可愛いもの、セクシーなもの」といった宿題をもらって、じゃ、それをどう形にするか、を考える毎日。自分がデザインした商品をブランド側も「そう、これが欲しかった」と言ってもらえたとき、街で自分のデザインした商品を着ている人を見かけたときは、本当にやりがいを感じます。(c)senken h

【関連情報】
特集:senken h 114