【5月31日 AFP】イラン系カナダ人デザイナー、エルハーム・セイエド・ジャヴァード(Elham Seyed Javad、27)が、スポーツ競技を行うイスラム教徒の女性に向け、スポーツ・ヒジャブ「ResportOn」を考案した。

■抗議でなく解決策を

 イスラム教では、女性スポーツ選手が体や髪の毛を公にさらすことが禁止されている。そのため、彼女たちは頭髪を覆い隠すスカーフ「ヒジャブ」を 着用したまま競技を行うが、欧米の試合では「ヒジャブ」が受け入れられないこともある。

 07年にカナダ・モントリオールで開催されたテコンドー大会では、ヒジャブを着用していた5人のイスラム系女性が退場させられるという事件が あった。モントリオール大学(University of Montreal)で工業デザインを学んでいたジャヴァードは、この事件に怒りを覚えたが、「抗議を行うのでなく、解決策を見つけ出す」と決心した。

■フード付きウェアの誕生

 そして誕生したのが、イスラム教徒の女性たちが教えを忠実に守りながら競技に参加できるフード付きのウェア「ResportOn」だ。 「ResportOn」は伸縮性のある布地を使っているため着脱も簡単で、織布製の素材が汗を吸収してくれる。

「ResportOn」を使用する競技指導者は「熱もそれほどこもらず、とても安定性があります。髪型もくずれません」と賞賛。テコンドー教室の 生徒も「ResportOnが誕生したことで、私たちもスポーツが楽しめるようになりました。以前は辞めざるを得ない状況だったのです」と語る。

■スポーツ以外にも活用

 大学側は即座にジャヴァドが考案した「ResportOn」の将来性を見抜き、商品化する手助けを行い、彼女に代わり米国とカナダで特許の申請 を行った。学内の発明品を商用化する「Univalor」のThomas Martinuzzoは「商品は大きな可能性を秘めています。スポーツをするイスラム教徒の女性がターゲットですが、F1競技や医療関係にも活用できると 考えています」と語る。オーストラリアで
は、警察官が同製品を着用しながら任務を行う実験が行われた。

■世界中から注目

 「ResportOn」は、現在オンライン上で59.99カナダ・ドル(約5000円)で販売されている。昨年11月に初のオンライン上で販売 を開始した際は、世界の170にも上る都市から注目が寄せられた。また、ジャヴァードが設立した「IQO DESIGN」は、次期五輪に向け、イランの女性サッカーチームのユニフォームを手がける予定になっている。

 モントリオールのスタジオでは、個々の顧客が持つ環境に適応した試作品が制作されている。ジャヴァードは「私の目的は、宗教とスポーツが持つ互 いの含意を切り離すこと」とコメント。彼女の夢は、世界中のスポーツ用品店で「ResportOn」が販売されることだ。(c)AFP/Geraldine Woessner

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