【3月1日 senken h】25年ぶりの大雪で全国にその名が報じられた北陸・福井だが、繊維・ファッション業界にとって深く知っておきたいのがテキスタイル産地としての姿だ。

 文献によると奈良時代にはすでに絹織物の産地として知られていたが、戦後、勤勉な県民性と天然繊維の製織で培った技術力に目をつけた合繊メーカーや商社がこぞって進出、ピーク時の製織業者は3000余社を数え、74年には世界最大の長繊維織物の産地にまで発展した。今では、プルミエール・ヴィジョンに参加するメーカーや、国内デザイナーブランドとも協業するところなど、従来の姿から一歩も二歩も前に出る産地メーカーも福井には少なくない。

 近年、非衣料分野への取り組みも増えており、自動車や土木、農業など幅広い分野にまで福井のテキスタイルが入り込んでいる。今回の工場取材では、東京開催の展示会では見ることが出来ない様々なテキスタイルを見て触れることができたが、防水用途や紅茶のティーパック用など、服地以外の生地にも美しいものがあり、作り手のアイディア次第でもっと多様な使い方ができるはず。何でもこなせる“ユーティリティープレイヤー”と言える福井のテキスタイルが活躍するフィールドは今後さらに広がりそうだ。

■福井のテキスタイルは日本一/増永矩明・福井県織物工業組合理事長
 「福井産地の歴史は古く、明治時代には今につながるような織物産地を形成していた。現在、主力のポリエステル長繊維織物は出荷額が日本一で、全体の41%を占めている。アセテート長繊維織物や羽二重類(交織含む、広幅もの)も4割前後を占めずっと1番だ。そのほかにも出荷額が一番多い織物はたくさんある。

 衣料で長年培った技術を非衣料分野に転用できているのも福井産地の強みだ。壁紙やカーテン、家電、エアバッグなどの自動車関連や土木まで、あまり知られていないだけで福井の織物は生活のあらゆる場所に入り込んでいる。今後は、産地内や産地間の連携で、より付加価値の高い製品を作ることがもっと出来るだろう。『和紙の織物』などはほんの一例に過ぎない。

 福井は中小企業の数も日本有数で、人口10万人当たりの社長の輩出数も日本一。中小企業が多いから、他とは違う独自性を発揮しようという気風も強い。個人オーナーが強いのは他の繊維産地とは大きく異なる。県内企業が手掛けた特殊な織物が『ロケット』の部品に使われたのは、そんな独自性を発揮した好例だ。

 産地全体の受注量は、リーマンショックで落ち込む前の水準にまで戻ってきた。全体的には高密度織物が牽引している。用途がインナー以外にも広がり、輸出も拡大しているためだ。韓・台・中国のメーカーも設備の更新が早くて品質は上がってきているが、高密度織物に関しては福井産地に一日の長があるだろう。

 テキスタイルはもとより、ニットも染色も実は多いから、「繊維で日本一」と言っても良いのではと自負している。そんな福井のテキスタイルを今後はブランド化したいと思っている。

■工場視察&テキスタイル展示会の参加者を大募集!~日本が誇る福井のテキスタイルをその目で確かめよう~
 4月14、15日の2日間、福井産地に読者を招待。年齢、性別、プロ・アマ問わず、福井のテキスタイルに興味のある人を同地の織物工業組合が往復交通費、宿泊費負担で招待する。

 過去の希少なサンプル生地や普段見ることが出来ない資材(非衣類)生地までを展示。現地では、テキスタイル工場メーカーとの懇親会やパーティーも開催する予定だ。募集人数は30人。詳しい内容や応募方法は下記ウェブサイトで。

※上記抽選にもれた方でも、福井テキスタイルに興味のある方はどなたでも参加できる、15社ほどが参加する地元での展示会の概要が4月15日に開催される。場所は福井県福井市大手3の7の1 繊協ビル8階会場。

【データ】
 福井県内での繊維工業は、事業者数で製造業全体の26.6%を占め1位と、県内でのプレゼンスは高い。従業員数も23.5%で1位だ(製品出荷額は3位、2774億8600万円)。また、製品別の出荷額においても、ポリエステル長繊維織物176億6800万円、アセテート長繊維織物4億円、羽二重類(交織含む、広幅)9億9000万円などが他県をしのぎ、ずっと全国1位をキープしている。ほかにもニット製スポーツ用ズボン・スカート、編レース生地など多数で出荷額が1位だ《出典:08年福井県工業統計(従業員4人以上の事業所)、08年工業統計(同)》。福井県織物工業組合の事業者数は335社。織機台数は1万38台(10年12月末現在)。ちなみにピーク時の74年には3100社あり、8万9225台が稼動していた。(c)senken h

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特集:senken h 110
福井テキスタイル展 地元開催展示会 公式サイト