【12月22日 AFP】シュルレアリスム美術やコミックが盛んなベルギーを拠点に活動する帽子デザイナーのクリストフ・コパン(Christophe Coppens)。その作品は、ポップ歌手リアーナ(Rihanna)の幻想的なヘッドドレスから、ベルギー王室の帽子までと幅広い。

 フランドル(Flanders)地方出身のコパンは前月、ベルギー王室御用達の帽子デザイナーとして認定された。過去にも、パオラ王妃 (Queen Paola)やマチルド皇太子妃(Princess Mathilde)たちの帽子を手がけてきたので、王室ウォッチャーや帽子愛好家にとって今回の御用達認定は予想通りの出来事だっただろう。

■正統派から個性派まで

 コパンは「ほかのクライアント同様に対応しています」と語り、王室での任務について詳細を明かすことはない。「もちろん決まり事はあります。作品はクラシックでありながら面白みのあるものでなければいけません」とコパン。「王室の帽子は控えめでありながら人々の注目を引き、マイナスの印象を持たせないものでなければならないのです」

 しかし、作品には一般人がつい振り返りたくなるようなデザインのものもある。リアーナがグラミー賞関連イベントで着用したピルボックス・ハットは、キラキラ輝く飾りものの短剣が目元まで垂れ下がっていた。また、ロックバンド「ゴシップ(The Gossip)」のミュージック・ビデオ「Pop Goes The World」では、ボーカルのベス・ディットー(Beth Ditto)がコパンのデザインしたスカルを両肩にのせていた。

■帽子との出会い

 コパンは現在41歳。子どもの頃は俳優を志していたが、「演劇学校に通っている際、自分には向いていないと悟った」という。その後、監督を志したが、「他人と一緒に仕事をするのがあまり好きでなかった」ことから、舞台衣装や装置を手がけるようになった。そしてそれが、コパンを帽子と引き合わせた。

 ある舞台にかぶり物が必要になった時、コパンは76歳の帽子職人に出会った。しかし、職人は初め、「あなたはまだ若すぎる。帽子作りは真剣な手工業だから」とコパンに技術を教えることを拒んだ。しかし最終的に願いを受け入れ、コパンは彼女の元で1年間帽子作りを学んだ。

 コパンは「帽子作りが大好きです。帽子作りに必要なのは、自分と帽子だけ。ひとりで作業ができ、誰の助けもいらないのです」と語る。ひとつの帽子を組み立てるのに25から30時間かかるという。

■ミステリアスなアクセサリー

 コパンは「帽子は最もミステリアスなアクセサリー。シルエットを変えることも、ユーモア溢れる雰囲気を演出することもできる」と語る。「帽子は人目を引いてしまう。しかし、それと同時に女性を魅力的にもせることを忘れないでいてほしい。最初に女性をみてから、帽子を見るのです」

 ベルギーはマルタン・マルジェラ(Martin Margiela)やドリス・ヴァン・ノッテン(Dries Van Noten)、アン・ドゥムルメステール(Ann Demeulemeester)ら著名なデザイナーを多く輩出している。帽子デザインにおいても、エルヴィス ポンピリオ(Elvis Pompilio)という著名人を生み出している。コパンもそんな中で、堅実に成長を遂げてきている。

■帽子職人として

 陶芸や家具デザイン、舞台など他分野への進出を試みるデザイナーも少なくないが、コパンはそういった見掛け倒しのアート界に興味は無いという。「私はアーティストではないし、アーティストになるには勇気が必要だ。一方、帽子職人であるということは、ファッションの流通の一部であるということ。ファッションとは、経済だから」とコパン。

 ピーターパンのような笑顔が魅力的なコパンは、物静かで背が高く、おおらかで、街をサイクリングすることが大好きだ。しかし、普段決して帽子をかぶることはない。その理由についてコパンは「(帽子をかぶる帽子職人は)パンを抱えて歩くパン職人みたいなものだからね」と語った。(c)AFP/ Claire Rosemberg

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