【東京 20日 上間常正】クラシックカーの最大の魅力は、その「気品」の高さにあるといわれている。その車に命を吹き込んだデザイナーと自動車メーカーの並外れた情熱と技術、そしてその車を所有した人のオーラが息づいている。

 20世紀のはじめごろ、パリではベル・エポックといわれた華やかで平和な時代に、独特の雰囲気をもったユニークな車が数多く生まれた。途方も無く裕福な人々が最高の技術者に車を次々と発注したからだ。今なお残る名車には、当時のハイソサイティーの生活スタイルや富、誇り、美意識などが余すところなく象徴されている。

 例えば、今回の東京コンコース・デレガンスに出品されたドラージュのDI(1924年)は、美しいチーク材のボディーと紺色のメタル、シートが完璧な繊細さでバランスされている。当時の車はオーダーメードによる一点または少量限定生産で、オートクチュールのドレスとジュエリー、豪華な夜会などとセットになっていた。

 数々の名車は、過ぎ去った時代の香りを伝え、それを作り出した自動車産業の証として存在している。東京コンコース・デレガンスのプレジデント、ポール・ゴールドスミス氏は「デザインの芸術性だけではなく、これほどの素晴らしいマシンの創出に注ぎ込まれた精神を理解してほしい」と述べている。

 一つの車種が世界中の工場で大量生産され、生産の合理性やコスト削減が追求される過程で、車がもっていた製品としてのオーラはほとんど失われた。時代の変化がそれを要請したことは否定できないが、そのオーラは一部の階級の贅沢が許された時代の単なる遺物というわけではない。

 完璧さや美しさを追求する情熱、それを楽しもうとする欲望といったようなことのもつ意味を、クラシックカーたちは改めて考えさせてくれるに違いない。ちなみに、極上の名車を今に伝えるためには、同じような情熱と惜しみない費用も必要なのだ。(c)MODE PRESS

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  • 東京コンコース・デレガンス公式HP