【8月2日】イランのシーア派イスラム法学者、アミール・セイエド・ハサン・エッテマーディー(Amir Seyyed Hasan Etemadi)師が7月14日、都内・早稲田大学(Waseda University)でイスラム神学校についての講演を行った。アヤトラの称号を持つ高位イスラム法学者の来日はまれ。講演後には、会場からの積極的な質疑応答も行われた。

■時代に合わせ、教育システムも現代化

 イラン中部の町カシャーン(Kashan)のダール・アル・エルム(Dar-ol Elm)神学校学長を務めるエッテマーディー師は、イランのイスラム神学校の歴史と時代の流れに伴う教育システムの変化について講演した。一般の教育機関とは異なる伝統的なシステムをとってきたイスラム神学校だが、入学試験や単位制度の導入、コンピューターを使用した授業など、近年教育システムの現代化が行われているという。

「今回の講演が、より広い視点からイスラムを見る機会に繋がれば嬉しい。」と人間文化研究機構(National Institutes for the HumanitiesNIHU)プログラム・イスラム地域研究代表の佐藤次高(Tsugitaka Sato)早大教授。

 また、講演会に参加した学生は「コンピューターを使って勉強するなど、普段私たちがイメージするイスラム神学校とは違う話が聞けた。イスラムに対する先入観を捨てて、より多くのことを知りたい」と感想を述べた。

■近年、女性の神学校も増設

 近年イランでは女性の神学校が増えており、女性の聖職者の育成にも力を入れている。主に男性が中心的だったイスラム法学界で、将来的に活躍する女性が増え、イスラム聖職者が政治の中心であるイラン社会に変化をもたらすことも予想される。

 同講演会を主催した早稲田大学の桜井啓子(Keiko Sakurai)教授は「イスラム神学校は過激思想の温床と判断しがちだが、その実態は国、地域、宗派によって異なる。1000年以上の歴史を持つイランのイスラム神学校でも、現代化の試みが進んでおり、20年程前から女性のための神学校も増えている。現代イランの政治・社会動向を探る上でも、神学校の理解は欠かせない」と語った。(c)MODE PRESS