【6月4日 AFP】東京、銀座に先月下旬オープンしたスイスの時計メーカー、スウォッチ(Swatch)の店舗ビルは、スイス人の細部へのこだわりと、コンパクトな空間を作ることにたけた日本の技術が一つに結実してできたものだ。

 約15億円をかけて建てられ、スウォッチ・グループ会長の名ににちなんでニコラス・G・ハイエックセンター(Nicolas G. Hayek Center)と名付けられた。この建物では、例えばエレベーターそのものが店の一部になっている。

■日本人建築家、坂茂が設計

 設計を手がけたのは、段ボールを使うなど、環境に配慮した建築を手がけることで知られる日本人建築家、坂茂(Shigeru Ban)氏。

 阪神大震災後の神戸に建てた、紙の教会で知られる坂は、フランスのメッス(Metz)に建設中のポンピドゥーセンター分館(Pompidou Center-Metz)なども設計している。

■グループ会社ショップもオープン

 5階までは、スウォッチのほか、グループ会社のオメガ(Omega)、 ブレゲ(Breguet)、レオン・アト(Leon Hatot)、ジャケ・ドロー(Jacquet Droz)といった最高級ブランドの小さなブティックが7軒入っている。

 1階に、それぞれのブランドショップに直結するガラスのエレベーターを配置。1階に大きなエントランスがある伝統的な百貨店とは異なる。
 
■ブティックとエレベーターの斬新なデザイン

 坂氏は、1階の店舗が不公平な利点を占めないように工夫したとしている。また、1階の各エレベーターは、それぞれが各ブランドのメーン・ショップへ直通するブティックの始まりとしてデザインされている。

 「それぞれのブランドのブースを、裏通りにひしめく店舗のように配置したかったのです。人々はこの通りを、各ブースに立ち寄りながら、ぶらつくことができる」

 クラシック音楽が流れる、ブレゲのエレベーターには、輝く金の時計が展示され、上品なジャズがかかるレオン・アトのエレベーターでは、黒いベルベットの上に宝飾品が陳列されている。「わたしたちは、お客様がエレベーターに足を踏み入れた途端に、喜んでいただきたいと考えています」とレオン・アトの販売員。

■環境に開かれた建築

 1階は、表と裏の通りをつなぐオープン・スペースになっている。それが475平方メートルのビルを面積以上の広さに見せている。主要な壁の一面は、植物に覆われている。「地上階を、街路や抜け道としてデザインしました」と坂氏。

 ハイエック会長は、この建築のデザインがブランドのイメージを強化するだろうと予測している。(c)AFP