ナバホ族、部族の伝統と現代法の調和を図る - 米国
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【ワシントンD.C./米国 8日 AFP】米国内のどの裁判所でも見られるように、ナバホ・ネイション(Navajo Nation)最高裁判所の裁判官らは黒いローブを身につけている。しかし彼らの仕事は、米国のネイティブ・アメリカンの中でも最大規模であるナバホ族の伝統と、現代法とのバランスを取ることなのだ。
米国西部の居留区内及びそこに暮らす30万人に対し司法権を持つ自治区ナバホ・ネイションは、部族の問題に関しての裁判権を有している。
しかし、今週ワシントンで行なわれた裁判に見られるように、ナバホ族の正義を求めることは、ヨーロッパから白人が上陸する以前から存在した部族の伝統と現代法との衝突の繰り返しなのだ。
法学部生や一般の人々に、ナバホ族について理解してもらうため、同部族の最高裁判所は、定期的にその裁判を居留区外で行うようにしている。
■すべての犠牲者は補償を受ける権利がある
今週、ワシントンD.C.にあるアメリカン大学(American University)の法学部にある裁判が持ち込まれた。
男性2人と女性1人、計3人の黒いローブをまとった判事が、「nalyee」と呼ばれるナバホ族の慣習と制定法との間に起こる問題の解決を迫られた。「nalyee」とは、何かの犠牲になった者は、苦しい感情を消し去るため補償されなければならないというものだ。
裁判が行われる部屋には星条旗はなく、大地の上に虹がかかったナバホ・ネイションの旗のみが掲げられた。旗の前には、浅黒い顔をし、長い黒髪を三つ編みにした裁判長Herb Yazzie氏が座った。
■自動車事故での賠償請求
事件は2002年6月のある夜にさかのぼる。ユタ(Utah)州西部、ナバホ居留区内のハイウェイで車が馬と衝突。運転手は死亡したが、同乗し、負傷した女性が損害賠償を求めたのだ。
運転手が加入していた保険会社やユタ州に対して敗訴、路上に馬が立ち入ることを防がなかったとしてナバホ・ネイションも訴えたが、これも敗訴となった。
やっとのことで、馬の所有者に対する裁判で賠償は認められたが、同所有者は十分な財産を有していなかったため、裁判所が下した賠償額は決して払えないと思われた。
そこで原告は、馬が飼われていた土地の所有者へ賠償を求めた。保険契約を有していた貧しい夫婦だった。
■ナバホ・ネイションの最高裁判決は数か月後の予定
連邦及び州法では、原告は立て続けに損害賠償裁判を起こすことはできない。しかしナバホ族の伝統「nalyee」に基づけば、すべての犠牲者は苦い思いをなくすために、補償を受ける権利があるというものだ。
ナバホの下級裁判所は原告の訴えを退けたが、ナバホの最高裁判所は伝統と法律の問題を調和させる良い機会だと考え、この事件を取り上げた。ワシントンでの公判のあと、数か月以内に判決が下される予定だ。
「我々にとって、法とは争いに勝つためのものではありません。平和的に共存していくためのものなのです」と、1959年に構築された独自の法制度へのナバホの取り組み方を説明しながら、Yazzie裁判長は語った。
「ナバホ族の慣習や価値観はとても公平なものだと思います。我々の使命は、米国政府の制度の中に我々の伝統的な価値観や概念を取り入れることなのです」Lorene Ferguson判事は述べた。
写真は、アリゾナ(Arizona)州のナバホ居留区内にあるPowell湖付近の様子(3月27日撮影)。(c)AFP/Getty Images David McNew
米国西部の居留区内及びそこに暮らす30万人に対し司法権を持つ自治区ナバホ・ネイションは、部族の問題に関しての裁判権を有している。
しかし、今週ワシントンで行なわれた裁判に見られるように、ナバホ族の正義を求めることは、ヨーロッパから白人が上陸する以前から存在した部族の伝統と現代法との衝突の繰り返しなのだ。
法学部生や一般の人々に、ナバホ族について理解してもらうため、同部族の最高裁判所は、定期的にその裁判を居留区外で行うようにしている。
■すべての犠牲者は補償を受ける権利がある
今週、ワシントンD.C.にあるアメリカン大学(American University)の法学部にある裁判が持ち込まれた。
男性2人と女性1人、計3人の黒いローブをまとった判事が、「nalyee」と呼ばれるナバホ族の慣習と制定法との間に起こる問題の解決を迫られた。「nalyee」とは、何かの犠牲になった者は、苦しい感情を消し去るため補償されなければならないというものだ。
裁判が行われる部屋には星条旗はなく、大地の上に虹がかかったナバホ・ネイションの旗のみが掲げられた。旗の前には、浅黒い顔をし、長い黒髪を三つ編みにした裁判長Herb Yazzie氏が座った。
■自動車事故での賠償請求
事件は2002年6月のある夜にさかのぼる。ユタ(Utah)州西部、ナバホ居留区内のハイウェイで車が馬と衝突。運転手は死亡したが、同乗し、負傷した女性が損害賠償を求めたのだ。
運転手が加入していた保険会社やユタ州に対して敗訴、路上に馬が立ち入ることを防がなかったとしてナバホ・ネイションも訴えたが、これも敗訴となった。
やっとのことで、馬の所有者に対する裁判で賠償は認められたが、同所有者は十分な財産を有していなかったため、裁判所が下した賠償額は決して払えないと思われた。
そこで原告は、馬が飼われていた土地の所有者へ賠償を求めた。保険契約を有していた貧しい夫婦だった。
■ナバホ・ネイションの最高裁判決は数か月後の予定
連邦及び州法では、原告は立て続けに損害賠償裁判を起こすことはできない。しかしナバホ族の伝統「nalyee」に基づけば、すべての犠牲者は苦い思いをなくすために、補償を受ける権利があるというものだ。
ナバホの下級裁判所は原告の訴えを退けたが、ナバホの最高裁判所は伝統と法律の問題を調和させる良い機会だと考え、この事件を取り上げた。ワシントンでの公判のあと、数か月以内に判決が下される予定だ。
「我々にとって、法とは争いに勝つためのものではありません。平和的に共存していくためのものなのです」と、1959年に構築された独自の法制度へのナバホの取り組み方を説明しながら、Yazzie裁判長は語った。
「ナバホ族の慣習や価値観はとても公平なものだと思います。我々の使命は、米国政府の制度の中に我々の伝統的な価値観や概念を取り入れることなのです」Lorene Ferguson判事は述べた。
写真は、アリゾナ(Arizona)州のナバホ居留区内にあるPowell湖付近の様子(3月27日撮影)。(c)AFP/Getty Images David McNew