【パリ/フランス 28日 上間常正】07年秋冬パリ・コレクションは3日目の27日、コムデギャルソン(COMME DES GARCONS)やジュンヤ・ワタナベ(JUNYA WATANABE)、デザイナーが滝沢直己から藤原大に代わったイッセイ・ミヤケ(ISSEY MIYAKE)などが登場。クリスチャン・ディオール(Christian Dior)やジャンポール・ゴルチエ(Jean-Paul Gaultier)などのフランス勢やヴィヴィアン・ウエストウッド(Vivianne Westwood)など合わせて11のショーが開かれて本番たけなわとなった。

■コムデギャルソン(COMME DES GARCONS) 

 会場には子供向きのピアノ曲が流れ、ショーの冒頭はバイオレットのシフォンの細身のドレス、頭にはミッキーマウスのような黒の帽子、素朴なソックスに白いハイヒールを合わせたモデルが現れた。一見無邪気で子供っぽい雰囲気だが、どこかちぐはぐで不気味な感じを受ける。続いた服も同じタッチだが、パッドをつめて手のように見える手袋がアプリケされたり、服に微妙なふくらみがついたり、真紅のベロアが前身ごろの片側についてどきっとするほどフェミニンな印象が混じったりする。

 今回のショーのテーマは「キュリオシティー」(変なもの)。デザイナーの川久保玲は「最近は、ますます平凡なものが多くなったから。変わったものの価値を見てもらいたかった」とバックステージで説明した。子供は時にはとても怖く見えるときがある。しかし今回の川久保の表現には、それとは少し別でむしろ平凡さと子供の未熟さをイメージ連想させて強烈な揶揄の対象にしてしまった感じを受ける。それは、ある意味ではいつまでも幼児性を抜け着れない部分を残すファッション界の姿への苛立ちも含まれている。

 ショーの最後に登場した白一色の服の群れは、同じフォルムを用いながらも幼児性とはまったく違う緊張感のある美しい服だった。
  • [COMME DES GARCONS]ブランドトップへ

    ■イッセイ・ミヤケ(ISSEY MIYAKE

    デザイナーが3代目の藤原大に代わっての初めてのショー。藤原はこれまでA-POCの開発に携わってきただけに、新生イッセイ・ミヤケもその手法が主体となった。最近はテキスタイルや柄、ジャケットをはじめさまざまな立体的な構成もできるようになったA-POCを使った服が次々と登場し、またプリーツなどこのブランドの過去の蓄積も生かした服が並んだ。

     これだけで服そのものは確かにイッセイ・ミヤケらしいし、水準も十分に高かった。しかし残念なのは、今回の第1回目のショーはそれ以上でも以下でもなかったことだ。全体としてスタートの新たなメッセージは伝わってこなかった。A-POCは服の作り方そのものを変えてしまうような画期的な要素をもっているが、ショーなどではその意味がなかなか分かりにくい面がある。今回のショーでは平面の布地を3人のモデルが並んでその場で服になってしまう場面も登場させたが、それだけでは工夫が足りなかった。

     かつて三宅一生は工業製品ともいえるプリーツを、極めてアーティスティックなイメージで表現してみせた。作り方の革新性と飛びぬけて優れた芸術性がこのブランドの魅力だったが、藤原にはこうした面での今後の見せ方がこれからの課題だ。
  • [ISSEY MIYAKE]ブランドトップへ

    ■クリスチャン・ディオール(Christian Dior

     1月にパリ・オートクチュールコレクションで見せた路線を踏襲した。オートクチュールでは、ジャポニスムがテーマだったが、今回のプレタポルテはそれに、ムッシュディオール全盛の頃の50年代スタイルも大幅に増やして着やすい服をそろえた。

     ステージには、クチュールハウスを思わせるらせんの階段と白いアジサイの生垣。赤く染めたヘビ革の革ジャケットとフレアースカートはニュールック風。アストラカンのペプラムスーツ、オストリッチのAラインコートなど豪華な素材の50年代スタイルだった。袖や首の後ろには、オートクチュールと同じ折り紙ディテール。素材もディテールも量感もクチュールハウスならでははのゴージャスでエレガントな雰囲気が漂っていた。
  • [Christian Dior]ブランドトップへ

    ■ジュンヤ・ワタナベ(JUNYA WATANABE) 

     最近はクラシックなテーラードスーツや、つぎはぎのミリタリーなど重厚なデザインを並べていたが、今回はぐっと軽く柔らかくフェミニンになった。冒頭は白。洗って軽くしわを寄せた革ジャンと黒いミニスカートを組合せたバイカースタイルがキュートだ。その後、革ジャンに合わせるのは、パターンを斜めにひねったロマンチックな花柄や水玉ドレス。短冊状のフェルトで作ったヘルメットに、足元はごついワークブーツもバイカー風。

     テーマは「ロマンチック・イン・ブラック」。ジッパー使いの黒革コートや小さなカーディガンなどいつもに比べてデザインはジュンヤワタナベとは思えないほどベーシック。女性にとってすでに手持ちのアイテムが多いだろう。ウェアラブルで、売れそうだが、息を詰めてみつめたような、数年前までの新しさ?をもう一度見たい。
  • [JUNYA WATANABE]ブランドトップへ

    写真は、3日目に新作を発表したコムデギャルソンの新作を披露するモデル。(c)AFP/PIERRE VERDY
  • [07/08年秋冬パリ・コレクション]トップへ