【1月30日 marie claire style】1990年代、日本にいた母がパリを訪れた夏休みに、エクス・アン・プロヴァンスにて、プール付きの家を借りたことがある。この街には沢山の学校があり、各地から集まった学生に家を貸している人が多い。学生達が夏休みに帰省して、空いていた家を、私達は借りることにしたのだ。

 エクス・アン・プロヴァンスは地中海からさほど遠くないが、内陸のせいか、夏の日中は、とても暑い。いくらか涼しい午前中には、街中の幅広い並木道に、テントを張ったマルシェ(市場)が出店し、人々は買い物に行く。新鮮な野菜、果物、魚、肉が、溢れるばかり並んでいて、嬉しくなる。洋服を売る出店もあり、蚤の市のような古着屋もある。母と一緒に私は、度々買い物に出掛けた。

 そして、南フランスの野菜料理、「ラタトゥイユ」を、初めて目にしたのは、この市場だった。大きなフライパンに、玉ねぎ、トマト、ピーマン、ナス、コージェットを小さく切ったものを、蓋をせずに弱火でグツグツと煮ていた。私は、見た目に誘われ購入し、家に帰り食べてみると、とても美味しい!新鮮な野菜を豊富に食べられることもあり、マルシェに行くごとに持ち帰った。香辛料はお好みで、ローリエ、ニンニク、バジル、タイム等、人によっては、唐辛子を入れる人もいるそうだ。温めて食べたり、冷たいのも美味しい。「ラタトゥイユ」だけで食べても、とても美味しいが、肉料理や卵料理の付け合わせにしたり、パスタに混ぜても美味しい。そして、作り置きができるので、重宝する。

 プロヴァンスの午後は、陽射しが焼け付くように強く、部屋のブラインドを閉め、薄暗い中で昼寝をする人が多い。が、夕方になると、人々は街中に繰り出し、カフェのテラスは、鈴なりの人々で賑わう。

 アペリティフと呼ばれる食前酒がよく飲まれるが、この地方ではリキュールに水と氷を入ると、黄色っぽいベージュになる、「パスティス」が良く飲まれている。
 私も母とカフェの椅子に座り、「パスティス」を飲んでみた。

 夏休みが終わりパリに戻った私は、さっそく「ラタトゥイユ」を作ってみることした。
 
 近頃、南フランスのサン・ラファエルの友人宅に、度々私は誘われる。友人と一緒に食料品を売っているマルシェに買い物に行き、美味しそうな野菜、魚、チーズ等を吟味して買う。この市場のお惣菜屋の色どりの良い「ラタトゥイユ」は、とても美味しいので、必ず買って帰る。そして、友人宅のミディテラネの見えるテラスのテーブルに料理を並べ、海を見ながら食べるのだ。最高!

 もちろん、パリの市場にも、美味しい「ラタトゥイユ」はある。日本に比べると、フランスの野菜は、とても大きいものがあり、ナスなどは、ビックリするほど巨大だ。時々、日本の小さなナスが、懐かしくなる。近頃のパリには、冬でも「ラタトゥイユ」を作れる、新鮮な野菜が常時ある。物によっては、アフリカ産などという、野菜もあるし・・・一般に、「ラタトゥイユ」は夏の料理とされているが、我が家では、野菜をたくさん食べるように、季節を問わず常備食にしている。

■プロフィール
山崎真子(Yamazaki Mako)仏版『マリ・クレール』元ファッション・エディター、副編集長。日本の美術大学を卒業後、一般企業に就職。1968年に渡仏。テキスタイル会社に勤務後、フリーのスタイリストとして活躍する。85年「マリ・クレール アルバム」社に入社。サラ・ムーンやピーター・リンドバーグなど一流のカメラマンたちと仕事を重ね、『マリ・クレール』の黄金時代を代表する作品を創り上げた。2014年に同社を退職。現在は執筆活動に従事。

■関連情報
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(c)marie claire style/text: Mako Yamazaki