【11月12日 marie claire style】「STARS展:現代美術のスターたち─日本から世界へ」が森美術館で開催中だ。同展のみどころを片岡真実館長が解説する。

 日本を起点に国際的に活躍する6人のスターたち─草間彌生、李禹煥(リ・ウファン)、宮島達男、村上 隆、奈良美智、杉本博司。STARS展では、その活動を初期作品と最新作をつなぐ形で紹介している。森美術館の片岡真実館長はこう語る。

「欧米だけではなくアジアでも注目されている6名の方々です。美術館界、アートマーケットの双方で評価が高く、日本でも継続的に展示を行っています。初期作品と最新作を紹介することで、6名それぞれがどのように時代と向き合い、現在までキャリアを積んできたのか、その歩みを見てもらいたいと思いました」

 当初は東京五輪に合わせて企画し、外国人観光客に向けて日本の現代美術を紹介する意図もあった。コロナ禍で状況は一変したが、基本的に展示内容は変わらない。

「それぞれの方の作品が東京で常設されているところは限られていますし、日本より海外で展示する頻度が高い方もいます。この機会に日本の皆さんにも広く見てほしいと思いました。村上 隆さんに関しては、この社会状況に合わせてプラン変更の提案があり、2011年の東日本大震災をきっかけに制作した《阿像》と《吽像》を展示しています。『邪気を払う』という祈りを込めた提案です」

 会場入り口では、村上 隆のフィギュア作品《Ko²ちゃん(プロジェクトKo²)》が出迎える。壁一面の巨大絵画《チェリーブロッサム フジヤマ JAPAN》は本展のために制作され、「富士山」という画題に真正面から取り組んだ野心作だ。続いて広がるのが、李禹煥の展示スペース。初期の代表作《関係項》の再制作や、絵画シリーズ「対話」新作2点などで空間が構成されている。

 草間彌生は70年におよぶキャリアのなかで、水玉や網目模様、突起などをモチーフに作品を制作してきた。その系譜を概観できるよう、ニューヨークを拠点にしていた頃の初期作品から、1993年のベネチア・ビエンナーレに出品した《天上よりの啓示(B)》や《ピンクボート》、最新の絵画シリーズ「わが永遠の魂」までを紹介。小さな回顧展のような構成だ。宮島達男は、国際的なデビュー作《時の海》(1988年)の発展形ともいえるプロジェクト「時の海─東北」の最新作を展示する。

 奈良美智の展示スペースは、2つのエリアに分かれている。一つは初期のドローイングと本やレコードなど自身のコレクションを展示する部屋、もう一つが、夜空のような空間に月をイメージした作品などが並ぶ部屋だ。注目すべきは、本展のために制作された新作の大型肖像絵画《Miss Moonlight》。奈良作品の中でもめずらしい目を閉じた女の子の絵で、見る者が祈りを捧げたくなるような静けさをまとっている。

 杉本博司は古美術商を営みながら、写真を用いたコンセプチュアル・アートでキャリアをスタートし、建築、造園、伝統芸能などにも造詣を深めていった。今回、デビュー作ともいえる《シロクマ》を含む写真作品のほか、初監督作となる映画作品《時間の庭のひとりごと》を発表。杉本が神奈川県小田原市に設立した「小田原文化財団 江之浦測候所」の四季折々を映したもので、自身の集大成ともいえる作品だ。

 本展では、6人のアーティストの関連資料も見ることができる。それぞれの年表、言葉のほか、批評も併せて紹介。さらに、1950年代以降、海外で開催された日本の現代美術展の中から50展を選出し、カタログや当時の批評など貴重な資料を展示している。

「アーティストの関連資料を見せることで、6人がどのように世界で受け入れられたのかを検証しています。70年の間には評価軸も変わってきました。背景には美術界における変化だけではなく、世界の情勢や経済バランスも関係している。50の展覧会に関する資料で、日本の現代美術がいかに受容されてきたかを俯瞰します」

 6人のトップランナーの軌跡を追うとともに、日本の現代美術の歴史を知ることができる充実の展覧会だ。

■展覧会情報
「STARS展:現代美術のスターたち―日本から世界へ」
会場:森美術館(六本木ヒルズ森タワー53階)
会期:~2021年1月3日(日)

■プロフィール
片岡真実
森美術館館長。国際美術館会議会長。愛知県生まれ。ニッセイ基礎研究所都市開発部研究員、東京オペラシティアートギャラリーのチーフキュレーターを経て、2003年から森美術館に。20年1月より現職。

■関連情報
【無料ダウンロード】marie claire style PDFマガジンをチェック!
(c)marie claire style/interview & text: Saya Tsukahara