【10月23日 marie claire style】2021年春夏のミラノコレクションが、この9月22日から28日まで、コロナウィルス禍の非常事態宣言下、外国人不在のまま開催された。記事全文へ

【10月23日 marie claire style】2021年春夏のミラノコレクションが、この9月22日から28日まで、コロナウィルス禍の非常事態宣言下、外国人不在のまま開催された。7月のメンズコレクションに続いて、デジタルショーでの発表が多い。実際にショーや展示会をしたメゾンの数は57。これら3つの方式での発表を全て網羅するのは至難の技であった。

 会場には1メートルずつ距離を取って座席が設けられ、マスクの着用を義務づけられて、久々に会う人との挨拶もそこそこに、各自、自分の席に引きこもっていた。

 スピガやマンゾーニ通りには、いまだ鎧戸を降ろしたままの店舗もちらほら見かけられる。街行く外国人の姿はほとんどゼロ。販売業は不安定な経済状況のまま、運営を試みている。

 このような社会の状況を反映して、今回のミラノはミニマルで控えめ、軽さ、透明さ、優美さを訴える、静かなコレクションであった。ストリートスタイルはすっかり姿を消した。久々にミラノでショーを行った「ヴァレンティノ」の鮮やかな手書きの花の絵。シチリアン・バロックで覆われた会場の壁と床と服。これらからは明るいエネルギーを受け取った。

 話題はラフ・シモンズとミウッチャ・プラダの二人体制による第一回の「プラダ」。洗練されたユニフォームからは揺るぎのない主張が迸り出ていた。そして、「ジョルジオ アルマーニ」の無観客ショー のTV La7での放映も昨今のインクルーシブな傾向を先取りした企画であった。

 どのブランドも言うまでもなく、長い完全封鎖期間の体験がもたらした様々な感情や醒めた分析を以って、この9月のコレクションの発表に臨んだはずである。

 その結果は大きく三つに分別される。

■エネルギーを感じる陽気なコレクション
 一つは、それ故に明るい気持ちを鼓舞するかの陽気なコレクション。服のみならず、会場の壁も床も隈無くシチリアのバロックのパッチワークで埋め尽くした「ドルチェ&ガッバーナ」は、挨拶もままならぬマスク姿の観客たちの気分を大いに刺激したと思う。「MSGM」の高い彩度のピンクとオレンジ、レモンやメロンなどの色と大胆なフリル使いのドレスなども同様である。「エトロ」のプリントのリゾートスタイルも、来年の夏こそは、と希望を託すポジティブな姿勢の表現であるはずだ。「ヴァレンティノ」の鮮やかな花の絵が魅力的なボリュームのあるドレス類も、観る者に大いにエネルギーを注いでくれた。

■繊細なカラーリングが引き立つ静閑なコレクション
 もう一つは強い刺激ではなく、逆に静かで落ち着いたコレクション群である。色も中間色をさらに淡く使用した例が目に付く。透ける素材など、軽さも身上である。代表は「フェンディ」だ。カーテンに映る窓と樹の影をプリントした、白い薄い素材を使ったシンプルなドレス。物語を夢想させるロマンティシズムに満ちたコレクションである。「ジョルジオ アルマーニ」も淡いグレーグリーンやグレーの中間色の、流れるように柔らかなシルエットのドレスやパンツ、薄手の着物風のコートなどを、今回はLa7というTVを通じて広く一般に公開した。「マックスマーラ」もいつもながらのキャメル色のダブル素材のコートが登場したが、しかし今季は縫わずに開かれたままの袖から見え隠れする腕が静かで官能的である。「ボス」や「ヴァレンティノ」は、幾何学に切り嵌めたスカートなどによって軽さを表現している。ペイント風の花も目を捉える。

■ミニマルなデザインのリラックス&カジュアル
 そしてもう一つは、ミニマルでリラックスしたカジュアルな傾向である。「プラダ」のスウェット素材のフーディとギャザースカートのスーツはその代表といえる。装飾は凝ったロゴのデザインとアーティストのピーター・デ・ポッターによるダダ風の黒のグラフィック。アートを気軽に身に纏うといった感覚が、実に新しい。「トッズ」の微妙にしわが入れられて、すでに袖を通したかのような時間の概念の表象にも居心地のよさを覚えた。「アンテプリマ」や「チヴィディーニ」など、ニットを得意とするブランドの出番でもある。

(c)marie claire style/text: Miyuki Yajima

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