【8月14日 marie claire style】2020年秋冬パリオートクチュールコレクションが7月初旬、初めてon-line で発表されました。記事全文へ

【8月14日 marie claire style】2020年秋冬パリオートクチュールコレクションが7月初旬、初めてon-line で発表されました。ファッションショーというより、新作とともに各メゾンが今だからこそ伝えたいファッションの喜びを表現するものになっています。世界中がロックダウンによって自粛生活を余儀なくされましたが「着る」ことの大切さや、「服」による喜びを感じるメッセージが溢れていました。

 パリコレクションに通い始めて30年になりますが、湾岸戦争の時でさえパリコレは行われ、今回は全くの新しい体験です。公式スケジュールには7月5日から3日間、10:30から30分おきに33ブランドが予定されました。とはいえ、これはパリ時間。日本では夕方5時から夜中までの配信となります。デザイナーたちにとって、パリでの約2ヶ月のロックダウン中の創作活動となり、内容はさまざま。1分間のイメージフィルムで終わるメゾンもありました。
 
 「ヴァレンティノ」は、コレクション期間中にイメージ映像だけを見せ、21日16:00ローマのチネチッタで行われたショーをライブ配信しました。真っ黒いステージに15体の白いドレスを着たモデルたちが浮かび上がります。ドレスのスカートは4~5メートルもあるボリュームで、モデルはワイヤーでぶら下がっています。何枚も羽を重ねた白鳥のようなドレス、フリルを全身にまとう花のようなドレスなど、その繊細な技で仕上げる迫力満点のドレスはキャットウォークできない演出で効果的に表現しています。
 
 「ディオール」は幻想的な海や森に潜むミューズたちがクチュールのドレスをまとうショートムービーをイタリア映画界の巨匠、マッテオ・ガローネ監督が製作しました。2人のコンシェルジュが、モンテーニュ通りにあるディオールのメゾンを型どったトランクでミニチュアを運び、森の中のミューズたちに喜びを与えるというストーリーです。世界中、どこでもクチュールをオーダーできるというメゾンの真髄を感じます。ミニチュアドレスはパリでハイジュエリーのプレゼンテーションにも使われ、その細やかな技術はアトリエの得意とするところです。流れるような細かいドレープドレスやタフタが羽のように広がるブラックドレスなどが登場しました。
 
 「シャネル」はパリの伝説的なナイトクラブ「ル パラス」に通うパンクなプリンセスをイメージしたコレクションを並べました。映像はカンボン通りにあるお針子さんの姿から始まります。「クチュールは1㎜の差で違うものに仕上がるのよ」という言葉が印象的です。「サヴォアフェール」作品の仕上がりだけではなくプロセスの美しさ、職人の技を賞賛する言葉。ツイードに重ねるスパンコールやビーズ、織られたように重なる刺しゅうは、まさにその技です。ツィードのビスチェからリボンやチュールを重ね、裾にフリンジを施したミニドレスはお気に入りです。繊細でゴージャスなこのドレスに、レースアップのバレエシューズを合わせていますが、スニーカーを合わせても素敵なのはデザイナー、ヴィルジニー・ヴィアールの洗練を感じます。

 「メゾン マルジェラ」の「アーティザナル」コレクションは3回のイメージ発信の後、16日18:00に53分の映像を流しました。ロックダウン中のパリで、クリエイティブ・ディレクターのジョン・ガリアーノを中心に、スタッフたちがリモートでアイディアを重ねてクリエーションしていくというドキュメンタリーフィルムです。アトリエの裏側を探る興味深いものでした。服を壊し、新しいものを作り上げるアップサイクルの手法がクローズアップされます。ガリアーノが作った造語「レチクラ」をブランド名にしたラインは、ヴィンテージピースを解体し、新しいデザインで作り上げる、まさに1点もののクチュールアイテムです。フィルムの最後には、彫刻をイメージしたドレープドレスを、透ける布でモデルの身体に直接ピンワークして完成させました。透ける素材が重なるドレスは、モノトーンの映像がネガのようにドレスのシルエットを効果的に際立たせました。

 「ヴィクター&ロルフ」は、自粛生活でのルームウェアをとびきりキッチュでエレガントなドレスに仕立てました。「CHANGE」と書かれたガラスの扉からモデルが登場し、キャットウォークします。ハートモチーフがついたナイトガウンやSNSの絵文字をアップリケしたナイティなど、おこもり生活でもファッションを楽しもう!というメッセージが伝わります。

 今シーズンのクチュールコレクションは映像という手段を使って、それぞれのメゾンが新しい発表形式を試しました。ステージに音、光、演出が加わり緊張の静けさの中から始まるフィジカルなショーの臨場感はありませんでしたが、どのデザイナーからも、こんな時だからこそ服の持つ魔力や夢、喜びを表現したいという思いを感じます。

(c)marie claire style/text: Terumi Hagiwara

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