【7月29日 marie claire style】高校生のころ、私は東京・目白にある美術予備校へ通っていました。駅からしばらく歩いて、裏路地へと入り、閑静な住宅街を進んだ先にある予備校へ向かう途中、私にはいつも気になって仕方がないお店がありました。通りに面しているガラス戸は風が吹くとガタガタと音を立てます。そこには、ポスターが貼られていたりカーテンが引かれていて、店内の様子を伺うことが難しい。隙間からチラっと覗けたとしてもどうも私の知っているギャラリーや骨董屋とは雰囲気が違うのです。なんだかおばあちゃんちの2階にあるあまり使われない畳の部屋のような(言い方を変えれば物置部屋のような)そんなゆるさが漂っています。置いてあるものも、本当におばあちゃんちにありそうな網とか破れた布とか古ぼけたものばかり。店の軒先には「古道具」と書いてあり、職人さんや何かのプロの方が使う道具の専門店なのかな、と思ったりもしましたが、それにしては店から出て来る人たちがなんだか非常にお洒落なのです。

 それから数年後、渋谷区立松濤美術館でやっていた展覧会でこの店の正体を知りました。誰がつくっただとか、どれほど珍しいものだとかそういうことではなく、自分のモノサシで物を選んで店に置く「古道具坂田」。この店は、多くのデザイナーやギャラリストに影響を与え続けています。

 その翌年、香川県の猪熊弦一郎現代美術館で開かれた「物物」展。これは画家の猪熊弦一郎が集めていた高価なアンティークや道で拾った瓶などが、いっしょくたに展示されているものでした。

 ヨーロッパに留学したとき、いろいろな美術館へ行ったのですが、そこで私が一番感動したのは、超有名なアーティストの作品と、誰が作ったかも分からないような土器や人形が一緒に並んでいることでした。そして私は、後者に非常に惹かれたのです。

 この2つの図録を見ていると、物を見る目を想います。

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会期: 2020.7.4(土)~8.30(日)(予定)
※開館状況については東京オペラシティ アートギャラリーのウェブサイトをご覧ください。入場は事前予約制です。
定休日: 月曜日(祝日の場合は翌火曜日)、8月2日(日)(全館休館日)
場所: 東京オペラシティ アートギャラリー
〒163-1403 東京都新宿区西新宿 3-20-2
お問い合わせ先: 03-5777-8600(ハローダイヤル)
https://www.kci.or.jp/special/exhibitions2019/

■プロフィール
前田エマ(Emma Maeda)
1992年生まれ。東京造形大学卒業。オーストリアウィーン芸術アカデミーに留学経験を持ち、在学中より、モノづくりという観点から、雑誌のディレクション、ショーやイベント、ファッションブランドのモデルをつとめる。ほかにもエッセイ、写真、ペインティング、朗読、ナレーションなど、分野にとらわれない様々な活動が注目を集めている。N・F・B所属。

■関連情報
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(c)marie claire style/selection, text: Emma Maeda