【6月25日 marie claire style】先日、『ドクター・マーチの娘達』と、フランス語で題名された、グレタ・ガーウィグ監督の映画を観に行った。見始めてからしばらくすると、「アッ、これは、若草物語だ」と思った。

 ところ変われば、題変わるとでも言おうか、英語では『リトル ウーマン』、日本語では『ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語』。これは、作家ルイザ・メイ・オルコットの自伝で、4人姉妹の日常生活の喜怒哀楽が描かれている。

 映画の冒頭に、「私は沢山の問題を抱えていた、だから美しい物語を書いた。ルイザ・メイ・オルコット」と、書かれた字幕が流れた。

 出演者は、母性的な長女メグを演じるエマ・ワトソン。彼女は若い頃から『ハリー・ポッター』などで活躍している。順応性があり感受性が強い次女ジョーは、シアーシャ・ローナン。ロマンチストの3女ベスは、エリザ・スカンレン。優雅で繊細な4女エイミーは、フローレンレンス・ピューが演じている。

 そして、ローラ・ダーン。30年前彼女は、映画『ワイルド・アット・ハート』の不良役が印象的だったが、年月を経て、この映画では4人姉妹の聡明で優しい母親役。さらに、このところ大活躍、『君の名前で僕を呼んで』でアカデミー賞にノミネートされた、ティモシー・シャラメも出演していた。

 マーチ姉妹の大伯母を演じるのは、沢山の印象的な映画に出演し、何度もアカデミー賞にノミネートされ、受賞している大女優のメリル・ストリープという超豪華キャスト。

 さらに、男優では、ジェームス・ノートン、クリス・クーパー、ボブ・オデンカーク、フランス人のルイ・ガル等が名を連ねている。

 シアーシャ・ローナンが、主役の小説家志望の次女ジョーを演じ、彼女の空想が時空を飛び越え、物語は時間を前後しつつ展開する。

 そして、彼女は小説の売り込みにいつも奔走しているが、彼女がルイザ・メイ・オルコット自身なのだろう。ジョーを演じるシアーシャ・ローナンの演技は、秀逸!

 長女メグは結婚し子供ができ、次女ジョーは小説を書き、3女ベスはピアノを弾き、4女エイミーは絵を描いている。出演者達は、それぞれ4人の個性を、巧みに表現している。

 アメリカのマサチューセッツ州に住む4人姉妹が、喧嘩もするが、喜びと悲しみを分かち合い、愛しあう姿が描かれていて、沢山の胸が熱くなるシーンがあった。この映画の時代背景は1880年代中頃。

 映画の冒頭にエドゥアール・マネの描いた『草の上の昼食』風の絵を、4女のエミーが描いているシーンがあるが、まるで、印象派の絵の中に入り込んだようだ。みんなで海辺に出かけるシーンも、エドゥアール・マネの海の絵を思い出す。そして、衣装が素晴らしい!

 南北戦争の戦地に出兵し、怪我をした父親の看護に、母親が出かける旅費の助けに、ジョーは長い髪を切って売ってしまう。

 ショートカット姿で、気丈に母親を送り出すジョーだが、その後妹の腕の中で泣き崩れる。

 マーチ家の人々は愛に溢れていて、クリスマスの日、ローラ・ダーン演じる聡明で優しい母親は、近隣の貧しい子沢山の家に、自分たちの晩餐を届けようと提案する。早速、真っ白な雪景色の中、5人でお菓子や料理を持って行き、泣いていた子供達を笑顔にする。マーチ家の人々が家に戻ると、沢山の豪華な料理がテーブルに並べられていて、みんなで歓声ををあげ大喜び!

 マーチ家の人々が、自分達の料理を子供のいる家族に届ける姿を窓越しに見ていて、隣人の資産家ローレンス家の主人が提供して並べた料理だ。

 ローレンス家の主人は、強面な様相をしているが、とても優しい。3女のベスを家に招きピアノを弾くように勧め、後にピアノを彼女にプレゼントする。が、その後、ベスは病気になり、亡くなってしまう。

 4人姉妹に色々な形で絡み、神出鬼没のローレンス家のドラ息子ローリーを、ティモシー・シャラメが演じている。大伯母を演じるメリル・ストリープは、かなりの老け役のメイクで貫禄を示している。舞踏会のシーンが何度もあり、マーチ家の4人姉妹に絡む男性が、沢山登場する。父親が戦場から戻ってくる感動的なシーンは、西洋人の感情表現の豊かさを見ることができ、胸が熱くなる。

 姉妹の恋は、いろいろに交差するが、最後には落ちつくところに落ち着き、みんな結婚し子供が生まれる。大人数に増えた、家族のガーデン・パーティが行われるところで、映画はジ・エンド!

 ジョーの書いた小説は、何度もボツになるが、最終的に『リトル・ウーマン』と題され、発行される。エピソードが入れ替わり立ち替わり前後して展開され、従来の若草物語と少し異なるが、とても新鮮に感じられる。

 幼い頃、私は映画『若草物語』を観たことがある。当時の映画の、長女メグ役はジャネット・リー、次女ジョーはジューン・アリソン、3女ベスはマーガレット・オブライエン、4女エイミーはエリザベス・テーラーが演じていて、当時のハリウッドスターが勢揃いだった。男性陣は、ピーター・ローフォード、ロッサノ・ブラッツィ等が出演した。

 多分、映画好きの母が、幼かった私を連れて行ってくれたのだろう! 今でも少し覚えている。そして、私は本の『若草物語』も、色々な形で、何度も読んだのだ。

■プロフィール
山崎真子(Yamazaki Mako)仏版『マリ・クレール』元ファッション・エディター、副編集長。日本の美術大学を卒業後、一般企業に就職。1968年に渡仏。テキスタイル会社に勤務後、フリーのスタイリストとして活躍する。85年「マリ・クレール アルバム」社に入社。サラ・ムーンやピーター・リンドバーグなど一流のカメラマンたちと仕事を重ね、『マリ・クレール』の黄金時代を代表する作品を創り上げた。2014年に同社を退職。現在は執筆活動に従事。

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(c)marie claire style/text: Mako Yamazaki