【5月28日 marie claire style】「この世が明るさに満ちていたら、アートが存在する必要はない」

『ペスト』の著者アルベール・カミュはそういっているが、確かに今回の疫病禍の中にいると、そうした言葉は胸に響く。とはいえその闇の向こうに光が見えてこない限り、先へは進めないものだ。

 日本のコンテンポラリー・アート・シーンを牽引する森美術館の新館長に、今年の1月に就任した注目の女性、片岡真実さんは、そうした貴重な一条の光を、アート界にもたらしてくれそうな期待の人だ。

 「今は世界中の美術館が(新型コロナウイルスの影響で)閉まっていて、ニューヨークから運ぶ予定だった作品も、集荷することができません。色々なことがドミノ倒しになっています」

 歯切れのいい口調で、館長は困難な状況を語りだした。

 今秋開催予定のリリ・デュジュリーや三島喜美代らの「アナザーエナジー」展という女性アーティストだけの企画も、来年春に延期で開催を調整中という。

 「70から104歳までの女性たちばかりで、高齢者というより、これまで大変なキャリアを積んできた女性が、今もなお活躍しているということを見直してみたい」

 ご自身が、女性館長として注目されていることについては?

 「私自身はジェンダーを意識して生きてきたわけではないし、ただコンテンポラリー・アートを手がけてきたというだけです。それより現代美術館として、この森美術館を世界のアート界で、どのような方向性でやっていくか、どのような挑戦を試みていくか、そういうことを考えています」

 まっすぐで前向きな言葉通り、すでに世界の中での立ち位置を見据えているかのように、タフで情熱的な女性という印象を受けた。

 素顔の片岡館長は「インドなど、仕事で行った先で買ってきた香辛料で料理をするのが好きです」という。

 六本木の森美術館という華やかな舞台で、アートをどんなスパイスで味付けしてくれるのか、彼女の新たなディレクションに、今、熱い視線が向けられている。

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(c)marie claire style/ text: Kasumiko Murakami/ photo: Hiromasa Sasaki