【4月30日 marie claire style】10歳のとき、両親の仕事の都合で日本からパリ郊外のサン=ジェルマン・アン・レイという街へ引っ越しました。当時、日本語しか話せなかった私はフランス語を学ぶために現地のインターナショナルスクールへ通いました。友達がなかなかできず、ヨーロッパからの駐在の子が多い学校では勉強のペースが早く、日本語が母国語である私は、劣等感を抱いてしまい、孤独と戦う毎日でした。唯一の救いは、ピアノが好きだったこと。ピアノに熱中して上達することだけが、自己肯定感につながりました。

 サン=ジェルマン・アン・レイの街中には、フランス印象派の作曲家ドビュッシー(1862-1918)の生家があって、さらに車で1時間ぐらい行ったモンフォール・ラモーリーには、ラヴェル(1875-1937)が晩年を過ごしたという家もありました。そこには、実際に作曲に使われていたピアノが展示されていました。ダメ元で「弾いてみたいのですが・・・」と案内の方に聞いてみたら、なんと意外にも快く鍵盤の蓋を開けてくれました。私は、ここぞとばかり、弾けるようになったばかりのラヴェルの曲を弾いてみました。そのときの、古びて黄金色に滲んでいた鍵盤の色をすごくよく覚えています。私は調子に乗って、得意だったバッハなども弾いたりしたような気がします。

 何世代も先の少年や少女を癒やすクラシック音楽。現実世界には色々なことが起こりますが、今でも、慌ただしい気持ちのときほど、クラシックが無言で助けてくれます。

■PICK UP !/心を浄化したいときのクラシック曲
・J.S.Bach / Yasuaki Shimizu & Saxophonettes「CELLO SUITE No.1 PRELUDE」
サクソフォンの独奏(オリジナルはチェロ)。宇都宮の大谷石・石切り場の地下巨大空間などで録音されたそうです。(空間のリバーブが最高)。静かに震える。

・Maurice Ravel / Naida Cole「Jeux d’eau(水の戯れ)」
ただただ、聴いているだけで、水を浴びてるような気持ちになれます。空想水。ラヴェルすごい。

■プロフィール
マイカ・ルブテ(Maika Loubté)
SSW、トラックメーカー、DJ。日本人の母とフランス人の父の間に生まれ、10代まで日本・パリ・香港で過ごす。ポップスとエレクトロニクスを融合させたスタイルで、国内外で音楽活動を行う。2019年7月、アルバム『Closer』をリリース。agnès b.、Mercedes-Benz、STÜSSY WOMEN、Gapなどのブランドとのコラボレーションも行う。

■関連情報
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(c)marie claire style/selection, text, photo: Maika Loubté