【3月26日 marie claire style】小さい頃、私の部屋には母親の本棚がありました。その中に一冊、私の心を摑んで離さない本がありました。それは、川上弘美さんの著書『センセイの鞄』(平凡社)でした。少しくすんだクリーム色をしたカバーに、木の幹がシンプルな線で描かれている。その木々の中を鳥たちが飛んでいる。左側には抹茶色の四角があって、その中にタイトルが書いてありました。まるで和菓子屋さんの包み紙のよう。私はうっとり。何度もその本のカバーを眺めていました。美しい本に触れた、最初の体験でした。

 印刷博物館で開催中の「世界のブックデザイン2018-19」は、2019年3月に発表された「世界で最も美しい本コンクール」の入選図書を見て、実際に手に取って触れることのできる展覧会です。さらに、日本、ドイツ、オランダ、スイス、オーストリア、カナダ、中国の7ヵ国で開催されたコンクールの入選図書を加えたおよそ170点が展示されています。2019年は日本とオーストリアが国交を樹立して150周年にあたるそうで、これを記念してこれまでの受賞図書の中から厳選した20点のオーストリアの本も展示されていました。やはり! という感じなのですが、国ごとに個性がありますね。ビジュアルのインパクトに狙いを定めていたり、紙質にこだわっていたり、製本の技術がびっくりするくらい凝っていたり。中でも私がいちばん興味を惹かれたのは、今まであまり目を向けたことのなかった印刷技術でした。インキを盛って、重厚さや豪華さを演出したり、モノクロ写真の厚みを出すためにスミにイエローを混ぜたり・・・。製本も紙選びも、知れば知るほどプロの知恵に圧倒されるんだろうな~と、果てしない宇宙に放り出された気分になりました。

■RECOMMEND/「世界のブックデザイン2018-19」
会期: ~2020.3.29(日)
※会期要問い合わせ。詳細はHPを参照
会場: 印刷博物館 P&Pギャラリー
お問い合わせ先: 03-5840-2300(代)
https://www.printing-museum.org/

■プロフィール
前田エマ(Emma Maeda)
1992年生まれ。東京造形大学卒業。オーストリアウィーン芸術アカデミーに留学経験を持ち、在学中より、モノづくりという観点から、雑誌のディレクション、ショーやイベント、ファッションブランドのモデルをつとめる。ほかにもエッセイ、写真、ペインティング、朗読、ナレーションなど、分野にとらわれない様々な活動が注目を集めている。N・F・B所属。

■関連情報
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(c)marie claire style/selection, text: Emma Maeda