【11月29日 marie claire style】秋晴れが美しい9月、シャンパーニュブランド、ルイナールの収穫を祝してランスに向かいました。ブドウを手で摘み、ルイナール創始者の家の納屋でランチ会を楽しんだ後は、カーヴ内に展示されたアート作品を鑑賞するという大人遠足です。芸術文化関係者が60名招待された今回のテーマは「原点回帰」。

  2029年9月1日に創業300周年を迎えるルイーナールは、10年後に向けたカウントダウンとして、今年から毎年アーティストとコラボレーションをした作品を発表するとのことで、全てルイナールのカーヴや敷地内に、恒久的な作品として展示されます。記念すべき第一回目のお披露目は、環境問題への取り組みで評価されているアーティストユニット、ムアワッド=ロリエ(Mouawad Laurier)の作品です。ルイナールが誇る地下30メートルの石灰岩質カーヴは、振動も少なく、湿度は85%という熟成に最適な環境です。そんなカーヴに、深海に佇むブドウの根をイメージした巨大なステンレスの作品が設置されました。

  ムアワッド=ロリエは、「植物は知性を持っている」(植物学者ステファノ・マンクーゾ著)という本に大きなインスピレーションを受けたとのこと。植物は予測し、学習し、記憶するという知的世界を、AIを使うことにより作り出し、ルイナールの畑で起こる情報を全て収集する機能を作品に搭載しました。お天気、湿度、土壌の質・・・美味しいシャンパーニュを作るあらゆるデータを収集し、その変化によって、作品の音やライティングが変化し、2029年に向けて作品自体が進化するというプログラミングが導入されている革新的な作品です。常に疑問を問いかける現代アートの作品として、素晴らしいお披露目会となりました。今年はフランスで酷暑が2週間続いたため、ルイナールでは本来獲れるはずのブドウの収穫量が25%減ってしまったとのこと。

  ラグジュアリーブランドも今後ますます、気候変動を始めとする自然環境問題と向き合わなくてはならないと考えさせられました。意識改革と簡単に言いますが、快適さに慣れてしまった現代人は、強い信念を持っていない限り、容易に習慣を変えることはできません。ただ、最高に美味しいシャンパーニュを飲める機会が減ってしまうかもしれない、という危機感なら持てる人は多いはずです。ルイナールのように、個々の人々の価値観に上手く問いかける、魅力的で知的なメッセージを戦略的に取り入れる必要が出てきています。これぞ「セクシーな」環境問題への取り組みなのではないでしょうか。

■プロフィール
大岡陽子(Yoko Ooka)
神戸生まれ、パリ育ち。幼少期の7年間をパリで過ごす。関西学院大学フランス文学科卒業。再度渡仏し、パリ政治学院(シアンス・ポ)で広報学の修士号を取得。「バカラ」「ルイ・ヴィトン」「ルイ・ロデレール」といったラグジュアリーブランドでの研修を経て、現在はパリで最も歴史のある、最高級五つ星パラスホテル「ル・ムーリス」に入社。総支配人秘書、セールスマネージャー、アーティスティック・アドバイザーを経て、現在はコミュニケーションマネージャーとしてプレスやブランディングを担当。のセールス&PRを担当している。

■関連情報
・大岡陽子 公式インスタグラム:@mademoiselleyoko
・ホテル ル・ムーリス 公式HP:www.dorchestercollection.com/en/paris/le-meurice/
(c)marie claire style/photos & text: Yoko Ooka