【11月14日 marie claire style】ダイヤルに巨大なビー(蜂)を立体的に浮かばせたり、スネークを描いたり。しばしば"鬼才"と称される「グッチ」のクリエイティブ・ディレクター、アレッサンドロ・ミケーレの大胆なクリエイションは、時計でも発揮されています。1921年、イタリア・フィレンツェで高級レザー店として創業。時計市場への進出は早く、70年代からイタリアのデザインとスイスの技術とを融合したウォッチコレクションを展開してきました。今も時計の生産拠点をスイスに置き、6年ほど前に新たにダイヤルメーカーを傘下に収めたことで、より多彩な表現が可能になり、質感も格段に向上しています。今年も、ミケーレが好む60~70年代スタイルを再解釈した新コレクションが話題に。それが、この"グリップ"です。クッション型のフォルムは、70年代のヴィンテージウォッチを見るかのよう。サテンで仕上げたソリッドな前面は、やはりミケーレが好きなスケートボードのグリップテープからインスピレーションを得たとか。それが、モデル名の由来。その前面に開けた3つの窓に現れる数字で、時間・分・日付を示す仕掛けになっています。なかなかトリッキーな表示方法のようですが、実は名だたる老舗時計メゾンらが古くから手掛け、時計ファンからメカデジ(メカニカルデジタル)と呼ばれる古典的な機構。それを「グッチ」らしくポップでお洒落に仕立て直したのです。3つの窓に現れる数字は、初期のデジタル機器で使われていたフォントに似て、ウィットに富んでいます。ケースのアウトラインをファセットカットしてポリッシュで仕上げ、サテンの前面とコントラストをつけることでクッション型のフォルムを際立たせているのも、巧み。ケース全体をイエローゴールドカラーとしたことで、ヴィンテージな印象が一層高まっています。時計の本質をよく理解しているからこそ、古典的な機構をお洒落に再解釈できる。奇抜なだけが、ミケーレ・ワールドではないのです。

■プロフィール
髙木教雄(Norio Takagi)
1962年生まれ。ライター。時計を中心に建築やインテリア、テーブルウェアといった「ライフスタイルプロダクト」を取材対象に専門誌や雑誌で幅広く執筆。スイスの新作時計発表会の取材も、99年より継続して取り組んでいる。独立時計師フランソワ・ポール・ジュルヌ著『偏屈のすすめ。』(幻冬舎)の監修・解説も担当。

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(c)marie claire style/selection, text: Norio Takagi