【9月12日 marie claire style】「カルバン・クライン」は、時流とともに変化してきた、アメリカのブランド。設立は1962年で、私が生まれる前だから、ブランドの「第一次成長期」をリアルには見ていない。「すべてはカッティングから始まる」というデザインコンセプトが、社会進出を果たした働く女性たちに大ヒット。朝、子供をナーサリースクールに送り、昼は脇目も振らずに働き、夜はベビーシッターにバトンタッチし、そのまま着替える間もなくレセプションパーティに出かける─。機能とシルエットの美しさを備えたジャージー素材のシンプルなワンピースが、野心的でファッショナブルなキャリアウーマンたちを支えていたのだ。

 私が初めて「カルバン・クライン」の名前を知ったのは、92年になってから。アンダーウェアの広告で。当時、ほぼ無名だったケイト・モスが、スポーティなショーツだけで写るその写真は、「イギリスのはかなげな女の子×アメリカ的なスポーティな下着」、という「いい意味での違和感」とともに全世界を席巻した。フェイスブックやインスタグラムがなかった当時、これほどまでに、1枚の写真や1つのメッセージに人々の注目が集まるパワーを、私なりに感じたのだと思う。この後、ランドやデザイナーの名前だけでなく、「売れる商品」は誰が身に着けているのか、という「トレンドの生まれ方、育ち方」に変化が生まれ、それはSNSの流行につながっていく。F2層(35~49歳の女性)のリアルブランドであった「カルバン・クライン」が、若い世代に認知された瞬間でもあった。

 そしてその後、ブランドのバリューを決定的にしたのが、後にジョン・F・ケネディ・ジュニアと結婚した、キャロリン・ベセットの存在。ボストン大学を卒業後、「カルバン・クライン」のショップで働いていた彼女は、美貌とファッションセンスを買われ、本社のスタッフに。カルバン・クラインの当時の妻が、2人を引き合わせたと言われている。そして、同ブランドのデザイナーであったナルシソ・ロドリゲスのドレスを着て、2人は結婚。アメリカの言わば「ロイヤルファミリー」の御用達マークを冠したブランドとして成長していくのだ。例の飛行機事故で、この、世にも美しいカップルが消えてしまったと同時に、私と「カルバン・クライン」の距離も遠くなった。ただし、今季の「CK カルバン・クライン」のワンピースは個人的にとても好きだ。ロゴのアンダーウェアの人気再燃、さらにデザイナーの交代劇など、SNSのニュースとは関係なく、きっぱりと合理的なシルエットを着てみたい、と思っている。

■プロフィール
大草直子(Naoko Okusa)
1972年生まれ、東京都出身。大学卒業後、現・ハースト婦人画報社へ入社。雑誌の編集に携わった後、独立。ファッション誌、新聞、カタログを中心にスタイリングをこなすかたわら、イベント出演や執筆業にも精力的に取り組む。WEBマガジン「mi-mollet」のコンセプトディレクター。新媒体「AMARC」(amarclife.com)を主宰。インスタグラム@naokookusaも人気。

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(c)marie claire style/photo: Asa Sato/selection, text: Naoko Okusa