【4月25日 marie claire style】サンセバスチャン国際映画祭で22歳の若さで最優秀新人監督賞に輝いた奥山大史監督の長編デビュー作『僕はイエス様が嫌い』は、新世代の映画の兆しを感じると共に懐かしさを感じる作品だった。記事全文へ

【4月25日 marie claire style】サンセバスチャン国際映画祭で22歳の若さで最優秀新人監督賞に輝いた奥山大史監督の長編デビュー作『僕はイエス様が嫌い』は、新世代の映画の兆しを感じると共に懐かしさを感じる作品だった。

 東京から雪深い田舎町に転校してきた少年ユラ。通うことになった小学校はキリスト教の礼拝堂が併設されていて、聖書を読み、お祈りをすることが慣習になっていた。礼拝する同級生たちに戸惑いを感じていたユラの前にある日、小さなイエス様が現れる。そのイエス様はユラの小さな願いを叶えてくれる。そんなユラにカズマというサッカーが得意な聡明な友達ができる。一緒に流星群を見に行ったり、人生ゲームをしたり、カズマの別荘でクリスマス・イヴを過ごしたりして2人の間は近づいていく。そんなユラの前に悲劇が起こる。

 子供の頃、私にも忘れられない友達がいた。その友達は私にとって憧れの存在だった。誰よりも走るのが速く、給食を誰よりも多く食べ、クワガタやカブトムシ捕りがうまく、魚釣りの名人だった。彼と過ごした時間は私にとってかけがえのないものだった。子供の頃にあった記憶を不可思議で独特なユーモアのある物語として紡ぎ出したこの映画は、誰しもが忘れ難いものをすくい出す。

 観終わって、ユラだけに見えた小さなイエス様は、何だったのだろうと考えている。かつて、私にもイエス様はいたのかもしれない。信じることへの純真がかつての無垢な子供時代にはあった。信じれば救われる。しかし、願いが叶うばかりではなく、むしろ叶わないこと
の方が多いだろう。私たちはその裏切られたような気持ちを知りながら大人になってきた。そう考えると、この映画のタイトルは的を射た素晴らしいタイトルだとわかる。こんなにも子供の頃の気持ちを表したタイトルはない。

 スタンダードサイズ(1:1.33)で切り取られた構図は、最初は人の目の高さで撮られているが、神を信じなければならない出来事が少年に起こってからは俯瞰で撮られている。その神の目線で撮られた絵にどうにもできない少年の心情が映し出される。神の慈悲のない現実を見事に表現した映画だと思う。シンプルで正直な心を捉えた映像は、最後にあの懐かしい日の風景を思い出させてくれた。私たちは天から見つめられているのかもしれない。それを知らずして私たちは心に痛みを感じながら大人になっていくのだ。

■映画情報
・『僕はイエス様が嫌い』
5月31日(金)よりTOHOシネマズ日比谷ほかにて全国順次ロードショー

■プロフィール
行定勲(Isao Yukisada)
1968年生まれ、熊本県出身。映画監督。2000年『ひまわり』が、第5回釡山国際映画祭・国際批評家連盟賞を受賞。01年の『GO』で第25回日本アカデミー賞最優秀監督賞を始め数々の映画賞を総なめにし、一躍脚光を浴びる。04年『世界の中心で、愛をさけぶ』は興行収入85億円の大ヒットを記録し社会現象となった。以降、『北の零年』、『春の雪』、『クローズド・ノート』、『今度は愛妻家』、『パレード』(第60回ベルリン国際映画祭・国際批評家連盟賞受賞)、『円卓』、『真夜中の五分前』、『ピンクとグレー』などを製作。17年は震災後の熊本で撮影を敢行した『うつくしいひと サバ?』、島本理生原作の『ナラタージュ』が公開された。最新映画は、岡崎京子原作の『リバーズ・エッジ』。

■関連情報
・僕はイエス様が嫌い 公式HP:jesus-movie.com
行定勲のシネマノート:アーカイブはこちら
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(c)marie claire style/selection, text: Isao Yukisada

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