【4月10日 marie claire style】昨年末の「2020年、原美術館閉館」というニュースは、私の心を寂しさで包むものでした。

 原美術館のこぢんまりとした静かな建物の大きな窓からは、時間によって表情を変える柔らかい日の光が差し込み、懐かしいようなあたたかい気持ちに包まれます。木目の美しい床は、歩くたびにコツコツと音を鳴らし、色気に似たようなものを感じます。階段は老舗ホテルを思わせるようなモダンな造りで、のぼるときには姿勢を思わず正してしまいます。曲線を多用した建物なのに、甘くない。凜とした空気が漂っているので、私にとっては心地よい緊張感でアート作品と出会える場所です。ここでは日本の大きな美術館ではなかなか取り上げられない、今、世界で注目されている比較的若いアーティストの作品を観られることが多く、画集もあまり手に入らずインターネットで探して観ていた作品を目の前にできることが、本当に嬉しかったです。

 原美術館は1938年に個人の邸宅として建てられました。こんなに心ときめくモダンな建物が戦前に建てられたなんて、感動してしまいます。今でも美術館の中に、食堂、居間、浴室、寝室などの造りを活かして展示している様子を垣間見ることができます。戦後はGHQに接収されるなど、外国の方が住まわれていた時期もあり、その後、1979年に現代美術専門の美術館としてオープンしました。

 日本には実業家がつくった美術館がいくつも存在しますが、その多くは「収集していたアートを観せる」というきっかけで誕生しています。ですが、原美術館は「現代美術を通じた国際交流の推進と現代美術の活性化、アーティスト支援の場」を目的としてスタートし、所蔵作品を持ったのは美術館を運営するための財団を設立してからなのだそう。奇跡みたいな美術館があったことを、ちゃんと胸に刻みたいと思います。

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会期: 2019.4.13(土)~ 7.28(日)
会場: 原美術館
お問い合わせ先: 03-3445-0651
https://www.haramuseum.or.jp/jp/hara/exhibition/433/

■プロフィール
前田エマ(Emma Maeda)
1992年生まれ。東京造形大学卒業。オーストリアウィーン芸術アカデミーに留学経験を持ち、在学中より、モノづくりという観点から、雑誌のディレクション、ショーやイベント、ファッションブランドのモデルをつとめる。ほかにもエッセイ、写真、ペインティング、朗読、ナレーションなど、分野にとらわれない様々な活動が注目を集めている。Now Fashion Agency所属。

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(c)marie claire style/selection, text: Emma Maeda