【3月14日 marie claire style】薄命、薄弱、薄利、薄運・・・。「薄」が入る熟語には、よい意味が少ないようです。そもそも「薄い」の語源は、「失せる」の古語「失す」の形容詞化との説も。劣る、不十分、欠如などの意義にも多用されています。しかし機械式時計においては、薄さは美徳。薄ければ薄いほど、よりエレガントでドレッシィな印象になります。そして実力派の時計ブランドは、ムーブメントの薄さを競ってきました。

「ピアジェ」は、薄型の機械式ムーブメントを得意とするメゾンの一つです。ジュエラーとのイメージを持つ読者も多いかもしれませんが、1874年に創業したムーブメント・メーカーがルーツ。古くから薄型ムーブメントを手掛けてきました。そして1957年、厚さわずか2mmという、超薄型の手巻きムーブメント「キャリバー9P」を発表。以来、薄型ムーブメントで数々のワールドレコードを樹立してきました。「ピアジェ」が薄型にこだわる理由の一つは、それを包む外装の創造性の自由度が高まるから。

 この「ライムライト・ガラ」も、ベゼルの左側が上へ、右側が下へと大きく伸びて、優雅な曲線を描く様子が実に美しい1本。搭載するムーブメントは、2.1mm厚の超薄型。直径は20.5mmで、その中に131個もの部品が連携して正確な時を刻んでいます。これらの部品すべてが極薄で、単純に組み立てただけでは、動いてはくれません。機械式ムーブメントは、地板というベースの上に歯車などのパーツを構築し、上からブリッジと呼ばれる金属プレートをネジで留め固定して作られています。その際、薄い歯車同士は上下にわずかにずれただけで、嚙み合いが外れてしまいます。また薄い歯車やブリッジは、力加減を間違えると曲がってしまいます。指先で0.01mm単位の寸法差や歪みを検知し、調整し、組み立てられる「ピアジェ」の薄型ムーブメントは、匠の技の極み。薄さがエレガントさを高め、女性の腕を一層美しく華やがせます。

■プロフィール
髙木教雄(Norio Takagi)
1962年生まれ。ライター。時計を中心に建築やインテリア、テーブルウェアといった「ライフスタイルプロダクト」を取材対象に専門誌や雑誌で幅広く執筆。スイスの新作時計発表会の取材も、99年より継続して取り組んでいる。独立時計師フランソワ・ポール・ジュルヌ著『偏屈のすすめ。』(幻冬舎)の監修・解説も担当。

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(c)marie claire style/selection, text: Norio Takagi